2020.12.9 share

日本経済新聞社主催「日経SDGsアイデアコンペティション」の最終プレゼンテーション&表彰式が11月27日、東京・室町三井ホール&カンファレンスで開催された。会場にはファイナリストに選ばれた5チームが登壇し、審査員の前で最終プレゼンテーションを行った。

なお、本フォーラムは、新型コロナウイルス感染症の拡大防止のため、参加者および関係者の健康を第一に考えた結果、オンラインによるライブ配信で開催された。

「日経SDGsアイデアコンペティション」とは?

日本のクリエイターたちが、SDGsを「自分ゴト」として考え、実際のアイデアに落とし込む機会を提供することを目的に設立。2019年より、日本経済新聞社は「カンヌライオンズ国際クリエイティビティ・フェスティバル」の日本事務局業務を開始。カンヌライオンズを社会課題の解決につなげるために、クリエイティブの役割について議論する場ととらえ、積極的にカンヌライオンズに関わっていくための取り組みを行っている。

エントリー121作品の中から選ばれたファイナリストチームが最終プレゼンテーション

「日経SDGsアイデアコンペティション」1回目となった今回の課題は、「新型コロナウイルスの感染拡大により、世界の経済活動が停滞したことで、今年(2020年)の世界の二酸化炭素(CO₂)排出量は前年比8%(約26億トン)減少すると予測された。そこで、パンデミックが終息したあとも、CO₂排出量を抑えられるシステムの提案と、それを達成・定着に導くためのコミュニケーションプランを考える」というもの。

背景として、日本は他国と比べ気候変動に対する行動を、社会がアップデートしていく前向きな「機会」としてではなく、「負担」ととらえる割合が圧倒的に大きく、それが気候変動対策行動へ広く、深くつながらない要因の一つとされていることがある。

「負担」ではなく「機会」というポジティブな気づきを、一般生活者と企業、NPOといった民間組織等に与え、社会システムの変化を推進するリーダーシップを支援すること。「世の中ゴト化」する機運を高めていくこと。これらを前提として、10月2日に日経SDGsアイデアコンペティションへの募集を開始。121作品がエントリーし、最終的にファイナリスト5組が選考された。

ゴールドは、日本の美しい四季折々の絶景を守る「時限絶景遺産」世界中にポジティブな気づきを与えるプランと評価

最終的に選ばれた5組のファイナリストは、すべてにおいて甲乙つけ難く、6人の審査委員たちの中で票が割れ、審査は難航した。

なお、評価基準は、①アイデア(システムそのもの、またはシステムを実現するためのコミュニケーション)、②クリエイティビティ/オリジナリティ(コミュニケーションプランにおける斬新性)、③戦略(データドリブンなプランか、ターゲット設定、キーメッセージ)、④戦術(チャネルの選択、実現可能性や再現性、他者を巻き込む拡張性、意識変化から実際の態度変容を促す仕組み)の4項目。

見事ゴールドに輝いたのは、「時限絶景遺産」。気候変動による四季の消滅で、姿を消す日本各地にある四季折々の絶景を保護対象として遺産認定し、絶景が姿を消すと予測される日に向かってカウントダウンが進む時計塔をシンボルとして設置するプラン。

生活者・企業・自治体が、気候変動対策への具体的なアクションを起こしやすく、一般生活者がCO₂排出量を抑える行動へ浸透しやすいこと、そして最も実現しやすいという部分で全審査員の意見が一致した。

受賞者の相田百合子氏(電通東日本)は、「日本は四季の美しさと移ろいを重んじる国。この美しい絶景を守りたいというポジティブなメッセージを世界に発信していきたい」と喜びを述べた。

続いてシルバーは、「BEEF OR CHICHKEN OR PLANT」(ビーフ・オア・チキン・オア・プラント)。意外と知られていない畜産のCO₂排出量が多いことに着目し、環境に優しい植物由来の代替肉を小学校の給食で体験させ、学びへとつながる実現可能なプランと高く評価。

受賞者の中津太一氏(博報堂プロダクツ)と大沼光二郎氏(大広)は、「コンペ自体が自分ゴトとして大きな気づきを得られた。今後も、より多くの人にその気づきのきっかけを伝えていきたい」と述べた。

ブロンズは、「Earth Cost」(アース・コスト)。一般生活者に最も身近なスーパーマーケットを接点の場にし、気候変動に対して「能動的に行動ができる選択肢」と「選択基準」を一般生活者に提示したことが評価された。

受賞者の伊藤恵氏と井上慶美氏(共に東急エージェンシー)は、「コンペで終わりではなく、実現に向けて行動し、未来を変えていきたい」と今後の意欲を述べた。

ファイナリストその他の2組、CO₂排出量の運輸部門で鉄道・船舶へ切り替えを促す「カメさん便」(清水鈴氏/電通、林麻衣子氏/DENTSU TEC)、そして免許返納したシニアを気候変動に取り組むヒーローにし、返納後の暮らしも豊かにする「Green License Project(グリーン・ライセンス・プロジェクト)」(齋藤正和氏、實野圭佑氏/共にADKクリエイティブ・ワン)は惜しくも受賞を逃した。

審査員からは総論として、「すべてが実現可能なプランばかり。多くの企業がSDGsに対して何をすればいいか逡巡する中、このアイデアを企画で終わらせず、多くの企業との取り組みで、ぜひ実現に結びつけてほしい」と今回のファイナリストたちだけでなく、応募した全121チームや日本のすべてのクリエイターに期待を込めてエールを送った。

日経SDGsアイデアコンペティション公式ページ

受賞者のプレゼン資料はこちらからご覧いただけます。
https://www.canneslionsjapan.com/nikkei-sdgs-competition2020/