ヤングライオンズ/スパイクス コンペティションへのご応募ありがとうございました。

※ページ内敬称略

Digital

デジタル部門

たくさんのご応募ありがとうございました。以下、デジタル部門の最終結果と審査講評になります。

gold prize

Entry No.C005

博報堂中島 優人

博報堂髙須 雪絵

silver prize

Entry No.C004

POOL芦田 和歌子

プラップジャパン丸山 優河

silver prize

Entry No.C090

ADKマーケティング・ソリューションズ川西 萌登

フリーランス髙瀬 菜瑠美

bronze prize

Entry No.C043

博報堂下萩 千耀

DE松木 啓

bronze prize

Entry No.C062

博報堂中西 亮介

博報堂津島 英征

finalist

Entry No.C020

アクセンチュア多田 竜平

アクセンチュア奥 稔宜

finalist

Entry No.C115

電通木村 太郎

電通挾間 桜子

応募状況

提出作品数:100作品

総評・コメント

審査員長 大塚 智Droga5 Tokyo, Part of Accenture Song

審査を振り返ってみると「デジタル部門」とは、「何か”デジタルっぽい手段”で、ブリーフにある課題を解決できないか?」を競う部門ではないよねと、審査員が実感することに。例えば今年は「アート」というテーマだったからか、VR/ARのようなグラフィカルな手法を選ぶチームが多くありましたが、「それ、やりたくなるかな?」で早々に脱落することが多く見られました。すでに定着している技術を使うだけでは、人が振り向くか、触れたくなるか、その結果世の中が動きそうか、という点が重視される審査では、ものたりなく見えてしまいます。

最終結果をみると、デジタル部門は強いアイデアを言葉やグラフィックの力で克明に描けるかというヤングコンペの共通要素に加えて、「アイデアの新しさ」を掛け合わせて競われる舞台だと再認識。そういう意味では、今年はGenAIに関連するアイデアは多くあったものの、もっともっとデータドリブンなアイデアや、Web3など新しいカルチャーに基づいたアイデアがあったらよかったかもしれません。つまり、デジタル部門にはまだまだ勝ちに繋がる掘りどころがたくさんあるはず。

来年からもワクワクするエントリーが集まる部門になると期待しています。

審査員 兼田 麻衣McCann Health Japan

まずはエントリーされたみなさんに拍手を贈りたいです。アイデアを考え、手を動かし、ブラッシュアップする中で得た気づきは、きっといつかみなさんの力になってくれるはずです。

審査の中で何度も議論にあがったのは「デジタル部門」として選出するのにふさわしいアイデアであるかどうかという点です。言い換えるならば、このアイデアを社会実装していくときに、デジタルの力がアイデアをブーストしてくれているかを大切にしました。

また、良いアイデアでも、ボードでデジタル部門らしさを表現できていないものも多くありました。カンヌの本戦でも、同じ企画を部門ごとにボードを作り分けているエントリーが数多くあるので、ぜひ参考にしていただけたらと思います。

もう一点、課題に対して変化球で解決しようとしているうちに「誰を」「どう動かす」ことが必要なのかということから焦点が外れてしまったと感じる企画がいくつもあり、もったいないと感じました。ヤングのみなさんのアイデア力はとても素晴らしいと改めて感じたので、何度もブリーフに立ち返り「本当にこのアイデアが課題を解決できるのか」をチェックしつづけることを実践していただけたら、より強い企画になると思います。

最後に、プレゼン参加いただいたみなさん。熱いプレゼンをありがとうございました。各チームのプレゼン力の高さに心底驚きました。自信をもって送り出せるチームを選べたと思いますので、自分たちらしく楽しんできてください!吉報を待っています。

審査員 檀上 真里奈Wieden+Kennedy Tokyo

美術展におけるジェンダーバランスは、身近なようで目には見えづらい問題。難しい課題ですがチャレンジングなアイデアが多く、楽しく審査させていただきました。ヤングの皆様お疲れ様でした。

今回は地図アプリを使う、ARを使う、音楽配信アプリを使う、などで重複が多く、そこで伝えるメッセージにひねりがないものは残りづらかった印象です。デジタル部門は何を使うかのアイデアで止まってしまいがちなので、その一歩奥に視点の発見があるだけでこのようなヤングコンペでは一気に目立てると思います。(一方でデジタルの使い方のユニークさ、新規性についてもシビアに考えるべき・・難しいですが)

ゴールドとシルバーはアイデアとプレゼンの総合力の高いチームが選ばれています。本戦での健闘をお祈りします!

審査員 村上 晋太郎電通

今回上位に入賞したチームはどのチームも、核となるアイデアを「デジタル」という道具でうまく広げることができていました。
ゴールド賞を受賞した”The Color of Heroine”では、色彩で過去の女性アーティストの存在・ストーリーを可視化するというユニークなコンセプトに、機械学習を巧みに組み込んでいました。また、シルバー賞を受賞した”GROUP PHOTO of This Exhibition”は、生成AIを活用して美術館でのジェンダーバランスを可視化するという今ならではの解決策を示しました。一方、同じくシルバー賞を受賞した”Bankshe”は、ニュースメディアというデジタルな道具は従来からのものでありつつ、真ん中にある発見が非常に強い企画でした。

どのアイデアも非常に優れていた故に、プレゼンテーションで差がつきました。ゴールドを受賞した”The Color of Heroine”は、色彩によって女性のストーリーを伝えるという実施のディティールを、実際にグッズを作って、よりイメージしやすい形で説明してくれました。また、機械学習による色彩抽出のプロトタイプを作成し、フィジビリティを示した点も好印象でした。自分のアイデアの強み、弱みを的確に把握し、そこを補強するプレゼンテーションを構築できるチームが強いと改めて認識しました。

惜しくもショートリストまで上がらなかった企画は、アイデアよりも「デジタル」という道具が先行してしまい、アイデアが小さくなってしまっている印象がありました。例えば、スマートフォンアプリとARをデジタルな道具として使っている企画が多かったですが、必然的に着眼点や表現が似通ってしまいます。従来のweb、SNS、アプリに加え、機械学習、メタバース、暗号通貨…と、デジタルな道具が多様になった時代だからこそ、まず真ん中の気づきやコンセプトを育て、そこから最適なデジタル道具を導くことで、魅力的な企画に到達できると思います。そして、より楽しく企画出来ると思いました。デジタル部門に参加されたみなさん、ありがとうございました。これからも健闘を祈っています。

Media

メディア部門

たくさんのご応募ありがとうございました。以下、メディア部門の最終結果と審査講評になります。

gold prize

Entry No.M022

博報堂川合 日菜子

博報堂森川 芹

silver prize

Entry No.M018

電通東 加奈子

電通厚木 麻耶

bronze prize

Entry No.M082

マッキャンエリクソン木村 要

マッキャンエリクソン諏訪 ダニエラ

finalist

Entry No.M032

monopo Tokyo鎌上 真帆

monopo Tokyo見目 拓也

finalist

Entry No.M088

電通相羽 くるみ

電通油井 俊哉

finalist

Entry No.M116

博報堂倉嶋 崇

博報堂藤波 真由

応募状況

提出作品数:109作品

総評・コメント

審査員長 中尾 素子TBWA\HAKUHODO

チャレンジされた皆さま、お疲れ様でした。 そして受賞チームの皆さま、おめでとうございます! 今年もたくさんの素敵な作品、ヤングらしい視点や切り口に多くの刺激をいただきました。

ダイバーシティの視点が広がりつつある現代の中で、美術館の収蔵作品数にはいまだに大きく男女格差があるという事実はショッキングなものだったのではないかと思います。
美術館という身近な場所で起こっている問題でヤングの皆さんも自分事として捉えやすかったのでしょうか、今年は昨年度の倍以上の応募数がありました。

作品数が多かったので一次審査では審査員の中で意見が分かれる部分もありましたが、最終審査では4人の審査員の意見が驚くほど一致していました。

受賞したチームの共通点は

  • 自分達のアイデアに自信がみなぎっていて、明るく元気がいい!
  • アイデアに辿り着くまでにチーム内でプロコン含めてしっかり議論しつくしているので、審査員からのどんな質問にもしっかり受け答えできる。
  • チームの二人がそれぞれのroleをしっかり果たしていて、1+1=2人以上のパワーを発揮している。
  • 何を”media”と捉え、その”media”がどうideaをenhanceするものになっているか、考え抜かれている。
  • 慣れない英語でのdeck作成やプレゼンにストレスを感じた方もいるでしょう。
    しかし、カンヌの本戦では時間や環境の制約がある中で、海外の審査員に自分達のアイデアを胸を張ってアピールしなければならないのです。 日本人だから英語が苦手でも仕方ないよね、といった語学力のビハインドに対する配慮など一切ありません。
    自分達のアイデアを売りたいんだったら「英語でのコミュニケーション力」を磨くほかないのです。
    発音の良さや文法など関係なく、自分の想いを伝えられる「英語でのコミュニケーション力」は努力で身につけることが可能だと思います。
    今後グローバルに活躍したいヤングの皆さんは是非、今日からでも遅くないので 意識して頑張ってほしいと思います。

    そしてGOLDを受賞したチームは、お二人のpowerとpassionでぜひカンヌの本戦でも海外審査員を魅了し、是非GOLDを持って帰ってきてください!

    ヤングらしいフレッシュでエネルギッシュなアイデアとプレゼンに 来年もたくさん出会えることを心より楽しみにしております!

    審査員 金坂 基文電通

    ●はじめに

    お疲れ様です!時間なかったですよね、難問でしたよね。でも、キラリと眩しい企画がいくつもありました。緩衝材、宇宙、ブラシ、音声ガイド、椅子、割引クーポン、花、チュパ、サークル、ホテル、卒展。20代でこの企画たちを導き出せるって尊敬です。ヤングカンヌ、一回もエントリーしたことありません自分は。入社から10年間はメディア部門OOH局に在籍、枠を売ったり買ったり、枠の中で目立つことやったり、目立つ枠そのものを作ったりしてきました。で、自分が考えた「こうすれば目立ちますよ」企画が通るようになって、CR局に異動、そして今も同じようなことやっています、CMやコピーやポスターは作れません、Below The Line専門、言わば地下芸人。そんな自分がみなさんに言えるのは「どうすれば目立つか?もどうか考えてみてください」です

    ●全体講評

    「美味しい店なのに全然流行ってへん」 「あんなに歌上手いのに」 「投票しようよと著名人がYouTubeでいくら言っても」だらけですよね、この世の中。今回のお題、Gender imbalance in the art industry 、論理的に解決している企画だけど小さな表現・アウトプットでもって世に問うているエントリーが2割ほどいらっしゃいました。これ良くないですよ、まず気付かれないから。だからと言ってメガIPやハイブランドに頼っても良くないですよ、話題の主役は全部向こうがもっていくから。「その手があったか!」なアイデア、「その手でできるのか!」な技術、「そんなところまで!」な起業家精神。どうか10億人にインパクトを与える企画を考えてください。

    ●個別講評

    エントリー者限定ページにて全作品分、偉そうなこと言って大変恐縮なのですが、自分なりに気づいたことを書きます。仕事や遊びで多忙なのに、貴重な時間とお金を使って、ほんと凄いと思います、アタマ下がります。実質1週間で仕上げてるということ。可能性、伸びしろ、若い、滅茶苦茶羨ましい、自信持ってください。どうか自分を愛してください。

    ●終わりに

    昨年の講評を下敷きにしますが、広告賞以外に参考になるものを列記いたします。シャネル、LV、エルメスといったメガブランドの仕事(表現、体験、店舗、SNS、ショーイベント)、オリンピック開会式(パリは必見)、スーパーボウルハーフタイムショー、レッドブルの仕事、エスデブリンの仕事、BBC&NHK界隈、クレイジージャーニー界隈、イーロンマスク界隈(スペースX、テスラ、X)、パブリックアート(芸術祭、JR、 KAWS、バンクシー、ストリート界隈も)、世界のお祭りや祝日催事や学校行事、ラスベガスエンタメ全て(Sphereは中も外も、トップマジシャンの仕事も)、ライゾマのSyn見ましたか?2025のどのパビリオンよりも超越してるかも。

    「良い広告の5つの条件。目立つ/他とちがう/理解できる/わかる/商品シズルがある/人が動く感じがする」は基本の基本です。

    いつかどこかでお会いして雑談しましょう。長文・乱文、大変失礼いたしました。どうか来年もエントリーしてください。

    審査員 佐々木 芳幸monopo

    今年はじめてヤングカンヌ審査員をやらせてもらいました。

    おそらく2015年くらいからmonopoとしても自分個人としてもヤングカンヌにずっと挑戦していて、毎年「今年もヤングカンヌの時期か・・・」となつかしく思っています。参加者の努力や苦しみもすごくわかるので、まずは参加者全員に「お疲れさまでした!」と言わせてください。

    僕個人としては、本戦にヤング代表として参加した経験があるので、「本戦のリアル」を意識しながらどうやって現地で勝てるチームを選ぶかというのがミッションでした。

    結果GOLDに輝いた「Woman Boost Exhibition」は、自信をもって本戦に送れるすばらしいチームです。自信をもって頑張ってきてください!

    評価を通じて改めて気づいたポイントをいくつかシェアします。

    ●早いか

    グローバルコンペでは様々な文化・言語のバックグラウンドを持った審査員がいるため、デッキ・アイデア・プレゼン全ての要素において、「皆がすぐ理解できるか」という要素は非常に重要だと思います。
    本戦では数十カ国を1日でプレゼン審査する環境かつ、あらゆるバックグラウンドの審査員がいるため、全員が「Make Sense」していることは非常に重要だと考えます。「わかりやすさ」はそれだけで評価に値すると思います。

    ●プレゼンはコミュニケーション

    特に質疑応答において、基本的な英語力やプレゼンテーションスキルは必須ではありますが、ネイティブスピーカーだとしても、何を言いたいのか伝わらない、質問への回答がわかりにくい、いらない情報までダラダラと話してしまい、聞いていて飽きてしまうということはあると思います。そういう意味では英語力も大事だけど、「プレゼンテーションをコミュニケーション」と捉えて、届けかたを入念にデザインしたチームは上位に食いこんだと思います。
    すばらしいアイデアも、届けかたが微妙だと、本戦では勝てません。英語だけでなく、届けかたを頑張ってみてください。

    ●大きいか

    メディア部門は「何をメディアと定義づけるか」というのがみなさんが苦戦するポイントのひとつだと思います。全体を通して感じたのは、ユニークなメディアを発見することにこだわりすぎて、アイデアが実装された時の影響がすごく小さくなってしまうチームが多かったなという印象でした。「面白いアイデアだけど、これってすごく小さい世界でしか語られないよね」と思ったチームはやはり最後までは残りませんでした。
    この点では国内予選はバジェット制約がなかったので、小さく面白いアイデアもダイナミックに展開案を作ることは容易です。しかし、僕が参加した本戦ではバジェット設定がありました。

    「どれだけお得に大きい影響を与える設計にできるか」という問いは、本戦を意識したチームが取り組むべきポイントなのかもしれません。

    審査員 東谷 彰子ORIGINAL/タイムアウト東京

     ここ数年、ヤングカンヌメディア部門の審査をしていて感心したことがあります。応募者はみんな、働き盛り。ご自身の通常の仕事も大変であろうに、その上、このための企画を練り、資料をつくり、プレゼンの稽古をするという努力を惜しみなく重ねています。そのことにまず頭が下がりました。しかも、今年は応募数が増えました。これもとても嬉しいことでした。

     さて、企画書を読んで、すぐに気づいたことがあります。昨年も講評で書きましたが、英文がこなれていないのです。日本語から直訳をするのではなく、英語らしい表現で文章を仕上げることにもっと留意してほしいと感じました。正直、何が言いたいのかよくわからない企画書がいくつかありました。
     ポイントは3つです。

    1.なによりもまず、シンプルに書くこと(単語をなるべく少なくして、言いたいことを簡潔に伝える)。
    2.日本語から翻訳してもいいのですが、翻訳した文章をそのまま使うのではなく、重要な部分だけを残すこと。
    3.とりわけ、言語や文化が違う人にも的確に伝わる内容になっているかどうかの検証をおろそかにしないこと(曖昧な表現を残さない)。

     今は、英文をさらに洗練された内容にするために、類義語を教えてくれたりする、語彙力を強化してくれる便利なツールがたくさんあります。それらを存分に活用しない手はありません。さらに言えば、企画内容がグローバルスタンダードに即しているかどうか、リサーチ過程で十分確認をしておくことも必要です。

     そして、さらに大事なのがプレゼンです。その出来不出来によって、企画に対する印象がガラッと変わることがあります。英語力も大切ですが、まずはファーストインプレッション、元気さや明るさが何よりも求められます。
     プレゼンにおいてもう一つ、企画の印象を変える要素が、質疑応答です。審査員からの質問に答える過程で、どれほどリサーチに労力を費やしたか、チーム間でどれくらいの検討が重ねられたのかが、はからずも滲み出てきてしまいます。質疑応答は企画の深みを見せる最後のチャンスです。十分に時間を使い、プレゼンでは伝えきれなかったことを補うように熱弁を振るうことが重要になってきます。

     最後になりますが、本選への代表権を手にした皆さま、おめでとうございます。存分に力を発揮されるよう、活躍を心から願っています。そして、魅力的な企画がいくつかでも実現の運びとなり、そのことによって世の中がすこしでもよくなってくれるようにと、これも毎年、一審査員として願っていることです。

    Film

    フィルム部門

    たくさんのご応募ありがとうございました。以下、フィルム部門の最終結果と審査講評になります。

    gold prize

    Entry No.F044

    電通平田 航聖

    電通クリエーティブX何 瀾

    silver prize

    Entry No.F037

    博報堂平岡 咲

    博報堂プロダクツ松岡 芳佳

    bronze prize

    Entry No.F052

    博報堂プロダクツ神田 蘭子

    博報堂プロダクツ藤後 麻理絵

    bronze prize

    Entry No.F008

    博報堂松村 紘世

    博報堂古川 映

    finalist

    Entry No.F015

    博報堂河内 大輝

    東北新社林 賢五

    finalist

    Entry No.F019

    電通水田 秀俊

    アクセンチュア中村 理紗

    finalist

    Entry No.F045

    monopo Tokyo稲熊 智貴

    monopo Tokyo堂福 大成

    応募状況

    提出作品数:47作品

    総評・コメント

    審査員長 新沢 崇幸Wunderman Thompson Tokyo

    今年はまず、第一次予選のレベルの高さに驚かされました。 動画を提出しなくてはいけない、というハードルの高さにも関わらず、アイデア・クラフト共に想定を超えた作品が多く、審査員の票も割れました。 泣く泣く絞りましたが、今回選ばれなかったチームにも良かったものが多かった。それはお伝えしておきます。 フィルム部門の特性上、「短い尺」と「短い制作時間」との戦いになるため、シンプルなストーリーで最大の効果を上げることが大切になります。その時に何より重要なのが「課題に対する視点の発見」です。 どれだけクリアで、かつオリジナリティのある視点を持てたか。本選でもその差が結果を分けたのかなと思います。 今回選ばれたチーム、本当におめでとうございます!

    審査員 佐藤 雄介電通

    課題、大変おつかれさまでした。このヤングカンヌは、審査はどこまでいっても、他チームとの比較のなかでの評価になるので企画が被る、被らないも含め、半分は運なところもあるのですが。

    そんな中、最終の課題に対して、視点が面白かったと思ったのが2チーム。 一つ目はF019チームの「障害を持っていると、“助ける“という好意に対しても遠慮してしまう」という企画。二つ目はF044チームの「もしも、水難事故に巻き込まれたら、このダンスを思い出して」という企画。

    前者のチームは、物理的な障壁ではなく、メンタル的な障壁に視点をおいた点がとても良いと思った。まだ、表現への落とし込み方を知らないだけで、伸び代があるチームだなと思いました。こういう舞台で「良い視点」を正しく見つけてくるのは、本当に難しいので、自信持って大丈夫です。

    後者のチームは「もしもの時の課題解決方法」を表現に落とし込もうとした点が、きちんとクリエーティブで、オリエンから一歩進んだ答えになっていて、とても良いと思いました。2次で出した企画は2案とも視点も違い、アイデアが強かった点も良く。また、1次のビデオもきちんとできていたので、総合的な観点でGOLDに相応しいと思いました。

    また、How to say(表現の技術)的に、すばらしいと思ったのは、この2チーム。F015チーム。誰かこのチームに仕事をお願いしてみてください。何かしら結果を出してくれると思います。フルスイングする力、エンターテイメントする力、申し分ないです。そして、F045チーム。1次では一番票を集めたフィルムの作り方もさることながら、2次でもシンプルな設定でドラマタイズする企画力が秀逸です。両チームとも、最終課題はオリエンと少しずらしたところで表現が膨らんじゃったのが惜しかったけど、こういう舞台で、きちんと狙って勝負してくる姿勢は格好いいと思いました。

    そして、惜しくもGOLDは逃したけど、総合で上位だった3チーム。F037チーム。印象強いワンビジュアルの作り方がうまい。何がいちばん大切か、企画の引き算ができるチームだと思います。1次と最終とも強いアイデアを、シンプルに表現に落とし込める能力に長けているなと思いました。次に、F052チーム。企画段階で、どう仕上げていくか、きちんと見えているチームだなと思いました。「これって実際にうまくつくれるかな?」というコンテも並ぶなか、仕上がりに責任を持って企画している点が良く、大きな仕事をまかせたくなるチームだなと思いました。コアアイディアの設定も、グローバルでわかるかどうかという視点が入っていて、強く太く、良かったです。
    そして、F008チーム。個人的に、1次の映像の演出がすばらしかった。会話劇という、低予算でもできるアイディアながら、ディテールまで凝った演出力で見応えあるフィルムになっています。おそらくカンヌ現地での、制限された条件の中でも戦い抜くことができるチームだと思いました。

    と色々書きましたが、かつて僕も、同じ場を経験したことがあるので、きっと、悔しい以外の感情はないのではとも思いますが、今回の機会が、皆さんの次の何かに繋がればよいな、と勝手ながら思っております。また、会いましょう!

    審査員 たじまなおこ演出

     今年は総じてレベルが高く、どの作品にもしっかりとした企画力・構成力・演出力を感じた。ただし、中には企画の骨はあるのに表現に走りすぎてそれが見えなくなってしまっているものや、コピーが複雑になりすぎてそもそものメッセージがわかりずらくなってしまっているものも見受けられた。1次審査では、企画、コピー、クラフトにおいていずれかで飛び抜けたものを持っているか、もしくは平均点が高いかで評価をし、2次審査では国際舞台で活躍できる企画力、コピー力、演出力、フィジビリティ考察力などの総合的観点からの評価を行った。

     今後のためのアドバイスを添えるとするならば、海外広告賞へ応募する際には、表現と企画の骨のバランスを考えること、コピーはシンプルにすること、クライアントの方向性やテイストを研究すること、宗教を題材にしないこと。王道すぎても面白くないし、アイデアが奇抜すぎて課題から遠くなってしまうのにも気をつけたい。

    審査員 timoBlack Cat White Cat Music

    今年度は全体的に応募作品のレベルが高く、その数も豊富でした。
    自分も今回で審査させて頂くのが確か5回目となるのですが、その中でも視点の幅広さ、演出表現の高さなどは年々上がっていると思って、嬉しかったです。
    そのお陰で審査するのはとても楽しかったのですが、採点するのには苦しみました。 気付きとしては、第一次審査の方が皆さんの勇気を感じて、思いきったアイディアや表現が含まれていて、とても良かったのですが、第二次審査になるとちょっとリスクヘッジなのか、勢いがない、いい子な案に落ち着く感じの傾向が見受けられました。たまたまかもしれませんが、同じ勢いで勝負してくれると嬉しいです。
    また企画やアイディアは素晴らしいのに、クライアントへのメッセージがブレてしまうケースも見受けられました。アイディアや視点が素晴らしければ、素晴らしいほど、こんなもったいない事はないので、メッセージの芯をちゃんと捉えられているかを議論することは重要ですね。
    最後にやはり一番難しいのが英語の壁。
    これは余程の事がない限り消える壁ではないのですが、越えられない壁でもないです。
    なるべくシンプルに纏めて、頼らず、場合によってはA Iを使用すればそれなりのものが表現可能だと思います。
    ちょっと辛口なコメントになりましたが、今回は全体的に大変素晴らしく、日本のクリエイティブのレベルが上がっているのを感じられたので、とても未来が明るいと思い、嬉しかったです。

    PR

    PR部門

    たくさんのご応募ありがとうございました。以下、PR部門の最終結果と審査講評になります。

    gold prize

    Entry No.PR034

    電通東 加奈子

    電通厚木 麻耶

    silver prize

    Entry No.PR176

    電通宮田 和弥

    電通一森 加奈子

    silver prize

    Entry No.PR008

    博報堂中島 優人

    博報堂髙須 雪絵

    bronze prize

    Entry No.PR119

    電通高松 慎太郎

    サイバーエージェント藤木 良祐

    bronze prize

    Entry No.PR043

    博報堂森川 芹

    博報堂川合 日菜子

    bronze prize

    Entry No.PR095

    TBWA\HAKUHODO砂田 肇

    博報堂吉葉 颯花

    finalist

    Entry No.PR041

    電通神戸 弥宙

    電通番匠 遼大

    finalist

    Entry No.PR106

    ADKマーケティング・ソリューションズ 西島 陽祥

    ADKマーケティング・ソリューションズ 山田 風馬

    応募状況

    提出作品数:166作品

    総評・コメント

    審査員長 本田 哲也本田事務所

    受賞者の皆さん、おめでとうございます。昨年を大きく上回るエントリー数だったPR部門。審査団にとっては嬉しい悲鳴でしたが、多くの皆さんにPR部門へチャレンジいただき感謝します。ありがとうございました。

    さて、今回の課題ですが、なかなか捉え方が難しかったと思います。まずは提示された「男性アーティストと女性アーティストの美術館における作品所蔵率のギャップ」に目が行き、そのこと自体を世の中に啓発するという発想に行きがちです。しかしブリーフで明示されている「目的」は、あくまで美術館における女性アーティストの所蔵率を向上させること。つまり究極のビヘイビアチェンジは、キュレーターなど美術館側で起こさなければならない。このことを意識した上でPR戦略が組まれているかどうかは、ひとつの判断基準でした。

    また、PR部門としては「情報の拡散設計」にも目を配りました。美術館の中に閉じてしまったアイデアも散見された中、社会に伝わる話題性や多くの美術館で横展開できそうなアプローチかどうかです。

    最終審査まで進んだエントリーには、これらのポイントで見るべきものがありました。いっぽうで、ブリーフで強調されていた「戦略的なパートナー」については、全体的にあまり踏み込まれていなかった印象もありました。このあたりは、思いついたコアアイデアがパートナー連携を前提にしたものかどうか?でまとめ方に差が出ていたようにも思えます。

    いずれにしても、今回は考えるべき要素が多く、またそのバランス感覚も問われる、難しい(つまり、やりがいのある)課題だったのではないでしょうか。ようやくコロナも終わり、カンヌやスパイクスのリアル開催の活況も加速しています。日本代表となった皆さんの検討を祈ります!

    審査員 尾上 玲円奈マテリアル

    PR部門にエントリーされた皆さん、お疲れ様でした!そして、受賞された皆さん、おめでとうございます! NMWA JapanのHPを調べて気がついた人もいたと思いますが、僕はNMWA(ニムワ)日本委員会の委員の一人です。普段から、時代や社会を写す鏡だと言われるアートの世界で、ジェンダー平等を推進し、女性アーティストの海外進出を支援しています。 そういう意味で今回の課題は、日々アイデアやソリューションを模索している僕にとっても、身につまされるテーマでした。目を皿のようにして皆さんの作品を拝見しました。現代アートの世界における女性活躍推進で、実際の課題解決に直結しそうなアイデアの一つ一つに、「なるほど!」と相槌を打ちながら、手元のショートリストとして残したのが30作品。そこから、持続可能性の低そうなプランや、実行のハードルが高過ぎるプランを除いて、15作品。日頃からNMWAの課題に直面し、直接取り組んできただけに、実務家の目線で厳し目に見ても、15作品はどれも捨てがたい、愛おしいアイデアだと思えました。 最終的に2次審査でお会いした皆さん以外のプランにも、実務家の目線で厳し目に見て、アイデアに優れ、実効性に富んだプランが、確実に存在していました。アート業界の女性活躍に向け、願わくは、どれも実行に移したい。これまでと比べても、プランニングのレベルが格段に上がったと感じています。 エキサイティングなことに、今回出された課題は、実際に存在する組織が実際に取り組んでいるテーマの一部でした。受賞された皆さんはもとより、今回応募された皆さんからも有志を募って、実際の課題解決の世界でも、是非ご一緒できればと考えています。 カンヌ、スパイクスにおけるヤングコンペティションの日本の勝利を祈念しつつ、パブリックリレーションズの実務の世界でも、もっと盛り上がりませんか? 皆さんからのご連絡をお待ちしています!

    審査員 中川 諒Droga5 Tokyo, Part of Accenture Song

    ヤングなみなさま、おつかれさまでした。
    たくさん応募いただき、ありがとうございました。
    そして受賞されたみなさま、おめでとうございます。
    堂々と胸を張って、日本を代表して戦ってきてください。

    全体の感想としては、翻訳や画像生成にAIを使っていることで資料のクオリティは上がってはいるものの、全体的には勉強不足に感じました。PR部門はヤングのなかでも特に、ヤングカンヌそのもののPRにも力を入れてきた部門です。これまでの審査員や参加者の体験談や審査のポイントなどの記事がたくさんあがっています。それらに目を通していれば、もっと上にいったのに。というような企画がたくさんあったのは、もったいなく残念です。

    ヤングコンペは相手選びの瞬間に、結果が決まっている。と僕は思います。

    シビアですが、誰と組むかで勝ち負けが大きく変わってきます。今回うまくいかなかったチームは、勇気を出して来年は違う人と組んでみる、もアリです。特に若い頃は自分の企画や思考のクセや得意不得意な部分を、相手を変えることで実感できるいい機会です。エージェンシー、プロダクション、PR会社、コンサル会社、どんどん垣根を越えて取り組んでもらえると、もっと有意義な時間になると思います。

    来年もお待ちしています!

    審査員 村山 佳奈女博報堂ケトル

     今年もたくさんの若く熱いアイディアを浴びてインスパイアされました。ありがとうございます。

    GOLDに選ばれたのは、お二人の女性による企画 ’Outside Museum for Unwanted Outsiders’ 。シンプルなのに、他の誰とも似ていなかった強いアイディアと、端正なプレゼンテーションで高い評価を得ました。

    「美術館に入れてもらえない」という事実の具現のわかりやすさや、公共交通機関とのコラボレーション、「世界芸術の日」に照準を合わせた着眼点(国際女性デーを狙った企画が多かったですが、実際この日は、どの企業・団体も女性の課題について発信するレッドオーシャンな日です。アート界におけるジェンダー課題に、どこまでアテンションが集まるか? は、ちょっと疑ってみても良いかもしれません)(もちろん、国際女性デーに設定するのがダメなわけではないです)など、細部まで考え抜かれた完成度の勝利だと思います。

    最終審査でプレゼンターとして話されていたのはほぼお一人でしたが、ペアの役割をしっかり分担したことが功を奏したと思います。「結局PR部門は、英語が流暢に話せる2人で組まない限りGOLDにはなれないのでしょうか?」と、以前に質問を受けました。今回の結果で、そうでない勝ち方があると示せたのもよかったです。

    また、惜しくもメダルに至らなかったとしても、受賞をしている企画はすべて審査員の誰かがどこかしら惚れ込んだものです。中でも自分が心を打たれたのは、ファイナリストとなった ’RETIREMENT ART’ 。タイトルやビジュアルから意図が伝わりづらかったのですが、細部まで読み込んだとき、これは本当に実施できる・すべき企画として約200案の中で随一だと感じました。

    どこかで女性市長が誕生するたびに、前市長(だいたい男性)には、その街の美術館に所蔵されていた男性アーティストの作品が退職祝いに贈られる。そして、代わりに女性アーティストの作品が飾られる。

    女性市長の注目度に乗っかって、アート界の問題を広めていくこの仕組みは、継続的かつ広く実施可能で、お金もあまりかからない。少しずつ、でも着実に女性アーティストのパイを増やしながら、他ステイクホルダーにもメリットをもたらすのも素晴らしい。この静かなゲリラ戦は、アファーマティブ・アクションの本質を突いていると感じました。審査会でいちばんうれしかったのは、このすばらしい企画を考えていたのが男性2人組だったこと。企画の良し悪しに性別は関係ないと、改めて思わされました。

    一方、企画や作品の良し悪しで、作り手が純粋に評価されづらいのがリアルです。男性アーティストの作品のほうが優れて見えたり(美術の教科書に載っているのはほぼ男性の作品だから、当然)、仕事で若い女性が信頼されづらかったり(「有能な女性」という存在に、まだまだ社会の側が慣れていないと感じます。私自身も、年長男性がいるほうがどこか安心してしまうところがある)。自分自身も含めて、世の中はバイアスだらけです。

    そうした偏見や課題を解決するのに、PRの技術が活きるはず。ジェンダー課題から人種差別、地球環境保全、戦争と、途方もなく広いスコープに目眩がしますが、だからこそ取り組む価値があると思いますし、私自身もまだまだ学びの途上です。ぜひ、一緒にがんばりましょう。個人的には、若い人にこそ学びたいと思っています。

    Design

    デザイン部門

    たくさんのご応募ありがとうございました。以下、デザイン部門の最終結果と審査講評になります。

    gold prize

    Entry No.D026

    博報堂平岡 咲

    博報堂槇野 結

    silver prize

    Entry No.D034

    TBWA\HAKUHODO望月 瑠海

    TBWA\HAKUHODO戸矢 渚

    bronze prize

    Entry No.D019

    TBWA\HAKUHODO横田 恵莉奈

    TBWA\HAKUHODO上杉 莉子

    finalist

    Entry No.D004

    ADKクリエイティブ・ワン巡 佑太

    東急エージェンシー古林 萌実

    finalist

    Entry No.D006

    博報堂宮坂 和里

    博報堂プロダクツ山中 幸代

    finalist

    Entry No.D037

    電通デジタル香月 彩希

    電通デジタルダレーア 賢太

    finalist

    Entry No.D062

    博報堂根本 崚佑

    博報堂仲子 祐希

    応募状況

    提出作品数:68作品

    総評・コメント

    審査員長 筒井 晴子電通

    今年は、68作品の中から、ゴールド1、シルバー1、ブロンズ1、ファイナリスト4という結果になりました。ヤングカンヌの課題に、たくさんの時間とエネルギーを注いで頂き、本当にありがとうございました。お疲れ様でした。
    すべての部門で統一のお題でしたが、デザイン部門はVI制作をお願いしました。VIで課題を解決できるのか、と迷うところではありますが、アウトプットとしてある一定のフォーマットのビジュアルで提示をする。そのことで「思考の定着」を見せてもらいたいという意図でした。 課題は、ミュージアムでの女性アーティストの作品の割合を増やすためのVI作成です。でも、ただ女性アーティストの作品が増えればいいのかというと、実は違うんですよね、この問題。ことさらこれが女性の作品だとアピールしたり、強制的に50:50に作品数を上げることが解決ではないと思います。①「女性アーティストの作品の割合が少ないという事実を知らしめる」そして、②「社会での意識を変える・気運を上げる」③「美術館にその視点を持ってもらう」そのことで、④「これから女性アーティストに公平な場になるように」。何かしらのアクションがニュースになることで、作品数を増やそうとする美術館もあるだろうし、別のアクションの取り方もある。結果として、女性の作品の割合が増える。

    そのような視点で入賞作品を見てみると。
    ①「知らしめる」ことを、強く、広く、普段誰もが使うmapに潜り込ませた『Unfair Museum Symbol』は鮮やかでした。地図記号を使う案は他のチームからも出ていましたが、ミュージアムごとの割合を見せる、それによってミュージアムに考えさせるという作り方が秀逸でした。男女を青と赤で表現するのはジェンダー問題としてどう思うか、という質問には、一番の課題がその差があることを知らせること。共通認識である色を使うことが、認知の最短であること。そして色味は少しずらして(青や赤の中でも)検証してみたと、答えていただきました。今回の課題では、女性=赤やピンク、と捉えているVIが多かったことも事実。なんとなく使わずにベストを見つけ出そうとする姿勢が、アウトプットに出ていると思います。

    シルバーとブロンズの作品は僅差でした。『THE RARE CAPSULE』は、「少ない」というネガの事実を「レア」に置き換えて、エンタメにさせたことが素晴らしかったです。ですが、VIとしての定着がカプセルトイと距離があり、つながらなかった。やろうとしているアクティベーションが視覚的にすぐわかる、この場合のVIはサインであり掛け声ですよね、その役割としてたどり着いてほしかった。と言いつつも、まずコンペにおいて「ネガ→ポジ」を見つけ、形にしたのはすごい力で発見だと思いました。

    『Women’s Invisible Paint』は、「女性アーティストの作品が見えないものとされていた」という①のメッセージの変換がこのチームならでは。個人的に好きだなあと思いました。そしてVIがアイデアと直結していて、プロジェクトの看板になれる物だったので、『THE RARE CAPSULE』と、その「伝えるための定着」の差で、こちらがシルバーでした。あとは、“女性のものだから”という理由で、トーンやフォントを選んでないでしょうか。その常識を少し引いてみることも検証できたらさらに良かったかもしれません(あえてだったらスミマセン)

    今回は、デザイン部門で初めてプレゼンしていただきました。対面で質問したのは、プレゼンボードには載っていない、この答えに至るまでの思考、うまく行ってないところ、それはどうすればより良くなると思うか、などです。これは本選で戦う時に、このチームがどのように考えられそうか、を知るためです。審査員の皆さんは、エントリーされた作品の弱いところ、本質的な価値、もっと良くできるところを見つけながら、引き出そうと質問を投げてくださいました。恐ろしいほど緊張した人もいたと思いますが(ほんとお疲れ様でした)、私自身とても勉強になりましたし、制作者の方々のお話しを聞いて不思議なエネルギーをもらいました。

    さて、次なるトライのために。最初にこの課題の達成すべきところはどこか、を私なりに書いてみましたが、ぜひそこを考えてみてください。最初の設定が意外と他のチームにない何かを見つけることになるかもしれません。そしてアウトプットをするときに、何を伝えるためにどのフォント、色、形、を使うのか、なんとなくやらないようにぜひチームでいっぱい話してみてください。ボードのレイアウトも伝えるための手段としてとても大事だと思います。偉そうですね、すみません。長々説明しなければわからないアイデアは捨てて次を探してもいいかもです。と、長々書いておいてなんですが。結果は水モノですが、このプロセスが素敵な仕事になっていくんだろうなあとうらやましく思っております。ありがとうございました。

    審査員 飯田 訓子Wunderman Thompson Tokyo

    今年もたくさんの新鮮なアイデアをありがとうございました。また今年のデザイン部門は二次審査会でのプレゼンもあり、各チームしっかりと準備し、思考を凝らした熱のこもったプレゼンをしてくれました。
    ジェンダーアンバランスの問題をビジュアル・アイデンティティでどう解決するか、という今回の問いに対して本気で解決しようとすると、ビジュアル・アイデンティティだけでは難しいと感じたチームも多くあったため、ビジュアル・アイデンティティに施策を加えた提案も多くあり、さまざまなアプローチが見られました。
    その中で2点感じたことは、1つ目は、ビジュアル・アイデンティティという視点できちんと取り組めているか?施策に逃げすぎていないか?と言う点はやはり大事なポイントだと思います。そして2つ目は、ビジュアル・アイデンティティとして広がりが感じるものになっているかどうか?と言う点。現実世界で実装された時の広がりをリアルに計算できているアイデアは強いと改めて感じました。ファイナリスト・メダリストのみなさん、おめでとうございます!

    審査員 川村 真司Whatever

    [講評]

    Visual Identityを通して社会課題を解決するというオリエンが、非常に難しかったのではないかなと思います。VIだけではなかなか問題の解決につながらないので、VIを中心としたアクティベーションやプロモーションを通して啓蒙したりアクションを促したりしないと、なかなかソリューションになりづらい。なので注目を集められるようなVIを中心として、どのように展開することで課題の解決に近づけるのか。VIのデザイン・クラフトの部分と、それときちんと繋がった周辺の体験デザインのクオリティが問われる部門だったように感じます。(本当はそのように最初のオリエンに書いておいた方が良かったのではないか、と個人的には感じました。)

    ゴールドを受賞した作品は、シンプルでユニバーサルなVIデザインと同時に、それを起点としてきちんと課題解決までのアクションを促せるような体験設計となっていた点が、実に素晴らしかったと思います。プレゼンテーションもとてもしっかりしていて、本戦でも良い結果を残してくれるのではないかと応援しています!

    [全員にアドバイス]

    ヤングライオンズのコンペでゴールドをとるためには、以下がとても大切なのではないかと思います。これが真理というわけではないですが、考えるヒントになれば幸いです。

    シンプル:

    本戦の審査員はバーっと作品をみて、かなりスピーディに判断します。なので、ともかくシンプルでスピードの早い表現を狙った方が良いと思います。良く練られていても、一文で説明できるようなシンプルさがないと、ゴールドは獲れないと思った方が良いです。一文で、ポストイット一枚で、きちんと「わかる」アイデアになっているかを問いながら企画出しをするといいと思います。

    ユニバーサル:

    審査員はグローバルの審査員です。どんな国のどんな経歴の人が審査するかわからないので、ともかくグローバルでも伝わる表現じゃないといけません。いろんな人がそのアイデアをどうみるかを想像しながらデザインする必要があります。

    ユニークネス:

    同じようなアイデアがいくつか提出された場合、その案はほぼ確実にゴールドは獲れません(ショートリストにはなるかもしれないけど)。とはいえ、アイデアを「面白く」するために無駄に案をこねくり回してしまってもいけません。シンプルさとのせめぎ合いになると思いますが、諦めず粘って他の人が思いつかないような、効果的なアイデアをなんとか考え出しましょう。

    審査員 河野 吉博TBWA\HAKUHODO

    エントリーされた皆さん、お疲れ様でした!
    そして、受賞された皆さん、おめでとうございます!
    審査において重要だったポイントを下記2点にまとめました。

    1. デザインの課題解決力

    VIでIssueを解決するなんて無理!と参加者全員が感じたと思います。
    そのため、アクティベーションやプロダクトを軸にしたアイデアが多数ありました。
    また、アイデアのエッジを立てるために、Issueを狭めていたチームも多かったのですが、Issueを狭めるとアイデアがどれだけ良くても、結果的にBriefの課題解決に至らない、本質を欠くSolutionになっていました。
    優勝チームはVIを軸に課題解決につながるアイデアを提案されました。
    Briefから逃げずに解答を出したことが、他の応募作との差になって現れました。

    2. デザインの定着力

    今回のIssueは一般に認知されていない内容だったこともあり、インパクトや美しいデザインよりも、”伝わるデザイン”がより大切だったと思います。
    実は優勝チームと似たExecutionがありましたが、その差はデザインのわかりやすさでした。
    実際に世に出たときに、受け取り手が理解できるのか?
    審査会においては、受け取り手=審査員に置き換えられるので、プレゼンボード内の展開一つを見て伝わるものになっているのか?
    自分のアイデアやデザインをどれだけ突き放して客観的に判断できたかが重要だったかと思います。

    ちょっとした気づきで、アイデアが良い方向に変わるので、受賞を逃した皆さんも気を落とさず、この悔しさをバネに来年も是非チャレンジしてください!

    Integrated

    インテグレーテッド部門

    たくさんのご応募ありがとうございました。以下、インテグレーテッド部門の最終結果と審査講評になります。

    gold prize

    Entry No.I016

    電通大場 元人

    ADKマーケティング・ソリューションズ大見 聡仁

    silver prize

    Entry No.I011

    GO有田 絢音

    FACT中村 心

    bronze prize

    Entry No.I003

    博報堂中島 優人

    博報堂髙須 雪絵

    finalist

    Entry No.I047

    Wieden + Kennedy Tokyo津軽 健介

    ADK マーケティング・ソリューションズ高田 雄大朗

    finalist

    Entry No.I031

    電通徳光 一蕗

    電通山元 彩

    応募状況

    提出作品数:101作品

    総評・コメント

    審査員長 三寺 雅人FACT

    今年はエントリー数が昨年の2倍になり、たくさんのアイデアに出会うことができました。
    また1チーム10枚までというプレゼンにも関わらず多くの若きチームが情熱を注いでくれました。本当にお疲れ様でした。結果1000枚ものドキュメントを審査するという前代未聞の事態となり、審査員のみなさんもかなりの時間と労力を使って審査に向き合ってくれました。重ねてありがとうございました。
    参加したヤングのみなさんは今回のテーマに向きあい、相当頭を悩まされたと思います。昨年の海洋プラゴミのように誰もが知っている社会課題とは異なり、あまり知られていないテーマでしたから。アジアの美術館における女性作家の作品の所蔵率をどうすれば増やせるか。この課題を解決するためにまずは、美術館における女性アーティストの作品が男性に比べて圧倒的に少ないというジェンダー問題を明らかにし、話題にしていく必要があります。そして最終的には美術館を動かし、女性作家の作品所蔵率を上げるというアクトに帰結する必要があります。太いアイデアを軸に入り口から出口までの鮮やかな設計が問われた課題でした。
    インテグレーテッド部門は、そういった難解な課題を中長期で解決していくという目的に最適なカテゴリーだと思います。その昔のインテグレーテッドは、大きなアイデアを複数のメディアを掛け合わせて増幅させていくイメージでしたが、昨今はそれだけでなくフェーズを分けてストーリーを実装していく力も評価され始めてきました。そのためメディアだけでなく、PRの要素や手法が有効になってきていると感じました。今回多くのエントリーの中から選ばれたメダリストやファイナリストは、強いアイデアを軸に話題を増幅させ、世の中を新しいストーリーを作り導いていく力があったと思います。
    最終審査を行なったヤングのみなさんは、本当にプレゼンが上手でした。審査員を引き込み、納得させる力、質問への対応力や変換力、どれも格段に上がってきました。みなさん本当に努力され、この場に立っているんだなとおじさんはずっと胸熱でした。受賞者のみなさん、本当におめでとうございます。そして本戦に出る2チームには金銀ラッシュを決めてきて欲しい、そう願っています!そして最終に残れなかったヤングのみなさんも、課題に対して真っ直ぐにペアで向き合う時間は必ずみなさんの力と財産になります。これを糧にまた来年挑戦してください!

    審査員 安慶田 隼Wieden+Kennedy Tokyo

    まず、みなさん本当にお疲れさまでした!

    なかなか難しい課題だったと思います。まじめに考えれば考えるほど、どこに対してどんなアクションをすることが本質的な解決になるかがわからなかったし、なににフォーカスするか決めづらかったのではないでしょうか。

    現状のawareness向上を重視するのか、その先の解決を狙うのかなど、チームごとで考え方が別れていました。いろんなアプローチでの解決策があり得て、どれも間違いではないという今回のような課題だからこそ、アイデアの強さで突き抜けるという戦略もあったと思います。 しかし、特に一次審査では差がつきづらく、どのチームにも少しずつつっこみどころがあるというのが今回でした。それもあって、明暗を分けたのがプレゼンです。上位に残ったチームは、様々なステークホルダーの視点まで考え抜いていたり、質問を想定していていい返しができるなど、実践的な強さやアイデアを売る力を感じました。過度にお芝居のようにやる必要はなく、自分たちのアイデアの強いポイントを理解して、反論を想定して、堂々とシンプルにわかりやすく話せることが大事です。その点もばっちりなチームが多いし英語も問題ないし、僕たちのときとはレベルが違うなと驚きました。

    女性によるアートはこんなに不平等な状況に置かれていると問題を提示するようなアイデアが多かった中、#EMPOWER BRUSHは、働く女性の共感を獲得するというアングルが新鮮でした。ブラシのデザイン含めてエモーショナルに仕上げられていて、細かな展開まで練られていて、感情が動くイメージができました。インテグレーテッド部門は、思いついたアイデアをひとつのキャンペーンとして立体的に展開していく力を見られる部門です。実際の仕事で求められるものに近いとも言えるかもしれません。課題の捉え方で勝負はほとんど決まります。#UNWRAP FEMALE CREATIVITYは、ミュージアムで働いていてアートを選ぶ側にいる人たちにフォーカスし、そこからシンプルで強いアウトプットにつなげられていました。解釈に鮮やかさがあれば、アイデアはジャンプできるといういい例だなと思いました。

    たくさんの素敵なアイデアをありがとうございました!今はいろんな感情があると思いますが、しっかり休んでまた来年にぶつけてください。ありがとうございました!

    審査員 押部 由紀奈I&S BBDO

    今年のポイントは、女性全体の不平等性に対して、この課題ならではの「アーティスト」という要素をどこまで必然性をもって盛り込めるか、ということでした。
    今回のエントリーには、大きく分けて、
    1.まんま女性全体の問題にも流用できる企画
    2.コアアイデアや骨組み自体は女性全体の問題にも流用できるが、モチーフやメディア等エグゼキューションでアーティスト感を出している企画
    3.女性アーティストの問題でなければ成立しない企画
    の3種類がありましたが、当然ながら後者ほど解像度が高く、納得感のある企画になっていました。
    今回のように課題の特異度が高い場合は、その特徴にどこまでかっちりと焦点を合わせられているかを意識して、より特異性が高まる方向へブラッシュアップするのが近道です。
    慣れてくると初めから決め打ちで③の企画を出せるようになりますが、最初のうちは、
    1) とりあえずざっとアイデアを出しまくる
    2) 特異度の高いアイデアとそうでないアイデアの違いを抽出する
    3) そのインサイトやファクト、モチーフを深掘る
    というステップを踏むと、ポイントがつかめるかと思います。
    来年もぜひチャレンジしていただけると嬉しいです。そして今回、大切な時間を使って応募してくださった皆様、本当にありがとうございました‼

    審査員 柿並 俊介FOUR FEET/ McCann Health Japan

    今年も皆さんを審査すると同時に皆さんの視点やバイブスから学ばせてもらいました、ありがとうございました!今年のテーマは広義にはGender Equalityであり、このテーマのコンテクスト(文脈)をアイデアでどうアップデートするのかに期待して審査しました。重視したのは主に以下の2点です。

    1.Gender EqualityではなくGender Respect

    女性と男性の機会を均等にするための「マイナスをゼロにする」アイデアではなく、女性であること自体を称える「マイナスをプラスにする」アイデアを期待しました。女性として生きる誇りを称える#EMPOWER BRUSH、女性の影響力を再発見させるThe Color of Heroine、この2作品に特に惹かれました。

    2.時代をインテグレートできるアイデアか?

    アイデアの持続性(Sustainability)のことです。問題提起とか話題作りで終わるのではなく、未来長きにわたって女性アーティストに機会をもたらす実効性があるかという点です。多くの作品がこの点に答えていましたがその中でも、社会に広くスケールさせることを意識したUT to REVERSEに可能性を感じました。

    昨今アジアのクリエイティブが世界で苦戦する最大の要因は、欧米に比べてアイデアが逞しく映らず、小粒に見えてしまうためだと考えています。Goldに輝いた#EMPOWER BRUSHにはその逞しさがありました。代表に選ばれた方々、現地で逞しく暴れてきてください。
    参加されたすべての皆さん、お疲れさまでした、素晴らしいインスピレーションをありがとうございました!

    審査員 橋田 和明HASHI

    チャレンジしていただいたみなさま、お疲れ様でした。

    今回は「アート」という領域であり、知識の有無も含めて「課題設定」が難しいテーマだったかと思います。事務局の方に聞いたところ、難しいテーマだったとしても24時間で答えていく力を確かめたい、そして、この問題自体をエントリーしたみなさまにも知ってもらうという目的があったとのこと。なるほど。出題自体にも深い意味があるようです。きっと本番もそうなのでしょう。

    2回目の審査となりましたが、全体的なレベルも、最終プレゼンのレベルも上がっていたように感じます。その中でも、このIntegratedというカテゴリーの存在意義を考えさせてくれるものが最終的に評価が高くなりました。

    Integratedされているのが当たり前のこの時代に、なぜこのIntegratedとして評価できるのか。

    それは、コアとなるアイディアの引力が強いことなのだと思います。PRとして広がるというだけではなく、生活者、アーティスト、アート業界、企業、メディアがそのコアアイディアの引力によって統合されていく力があるのかどうか。

    「統合されるのは、キャンペーンではなく、ステークホルダー」なのだと思います。Goldを獲得した#EMPOWER BRUSHはその引力の設計が一番強かったことがとても良かったと思います。

    個人的にはCheaper Chups(ダリがデザインしたChupa Chapsを女性アーティストがデザインすると安く販売される)という作品が好きでしたが、課題の啓蒙止まりになっていたところが最終的に評価されなかったポイントでした。

    ただ、コピーはよくできていた。Integratedだと設計に目が行きがちですが、コピーとアートディレクションにももっと力を注いでいくことで、その作品がもっともっと強くなるものがたくさんあった気がします。
    また来年もご応募お待ちしております。

    Print

    プリント部門

    たくさんのご応募ありがとうございました。以下、プリント部門の最終結果と審査講評になります。

    gold prize

    Entry No.P143

    電通辻 健太郎

    電通関口 遼

    silver prize

    Entry No.P096

    電通プロモーションプラス古山 さくら子

    電通プロモーションプラス吉山 華蓮

    bronze prize

    Entry No.P053

    ジェイアール東日本企画小林 亮太

    ジェイアール東日本企画武田 優美

    finalist

    Entry No.P055

    サイバーエージェント宮本 璃子

    サイバーエージェント町田 圭佑

    finalist

    Entry No.P063

    CRAZY永井 絢

    LIBERATE岡本 勇樹

    finalist

    Entry No.P105

    電通高松 慎太郎

    サイバーエージェント藤木 良祐

    応募状況

    提出作品数:132作品

    総評・コメント

    審査員長 浅井 雅也Droga5 Tokyo, Part of Accenture Song

    本年度は応募数が昨年の 1.5 倍以上で、世界の舞台に意欲的なクリエイティブが増えたことを嬉しく思いながら審査させていただきました。プリントのアウトプットに落とし込むにはかなり難しいお題でしたが、 応募者の工夫や試行錯誤をたくさん感じました。みなさん、まずはお疲れ様でした!

    今年はSHORTLISTなしでFINALISTと受賞3作品のみを選出させていただきました。選ばれた皆さんおめでとうございます。お題の難しさから上位入賞作品を残すことが難しく、審査員一同心苦しい限りではありますが世界レベル基準に該当しない作品はカットしSHORTLIST はなしとなりました。

    GOLD:アイデアとクラフトを極限までシンプルに突き詰めるのがプリント部門だと思います。メッセージのパンチの強さやクリアさ、スピード感、「ハッ」とさせられることを審査の大事なポイントとしましたが、 本作品は一番エッジがありました。メッセージそのものは一種の極論で、審査員内で「炎上スレスレか?」とも議論しましたが、最終的に「この二人なら現地でフルスイングしてくれそう!」 という期待もこめて GOLD とさせていただきました。もちろん、英語のクオリティや丁寧に作られたレイアウトも選んだ理由です。

    SILVER:イラストのクラフト力があり、メッセージを理解すると見方が変わるプリントならではの魅力はあったものの、ブリーフのお題を画に落としたところからもうひとつジャンプできたら更に加点されたと思います。

    BRONZE:他の分野が先進的になっていく中でアートが置き去りになる、という視点はユニークでしたが、クラフトには荒い部分がありました。

    ベーシックなポイントにはなりますが、ビジュアルを見て、キャッチ→ボディー→タグラインとロゴ→「あぁ!」となるようなプリントの基礎(特に Cannes Lions などの海外賞受賞作)を見て、プリントならではの目線コントロールや体験をしっかりとデザインしましょう!(ロゴを忘れてた人が多かった!)

    バンクシーの性別、チケットの半券、額縁が美術館にない、有名絵画のモデルが女性に変わっているなど重複するアイデアも多く、コンペではいかに被らないかが大事ということを審査員達もリマインドされましたし、生成 AI などを取り込んだアイデアもありつつ、テクノロジーに囚われて肝心なアイデア(メッセージや視点) を欠いてしまったように感じる作品も多かったです。女性作家の作品価値を上げるために男性作家の作品価値を下げることは本質的ではないので、「本質的に何を解決しようとするのか?」 という部分は本戦でも評価ポイントになってくると思います。

    プリントはまだまだチャレンジの余白があり逆転ホームランも打ちやすい領域ですので、来年さらに応募者が増えることを期待しています。受賞者の皆様本当におめでとうございます!

    審査員 市川 直人Wieden+Kennedy Tokyo

    今回は去年に増して、多くのエントリーがありました。
    参加してくれたみなさま、お疲れ様でした。
    審査員全員で議論を重ねた結果として、これからの本戦、そして2024年のヤングカンヌにぜひ活かしていただければと思うポイントをまとめます。

    ― ― ―

    “ 競合と被った時点で負ける ”

    これはプリント部門に限らず、コンペにおいて、そして普段みなさまが取り組まれている仕事でもそうかもしれません。
    アイデアの戦いにおいて、そのアイデアが誰かと被った時点で、かなり高い確率で1位をとることはできません。
    今回のプリント部門の最後は、提出した作品を超えてどのチームが本戦で戦うことができるケイパビリティを持っているかという議論にもなりましたが、そこに至るかなり前段階で、エントリーされた132の中で類似したアイデアや類似したエグゼキューションは落とされていき ました。1案しか提出することができないヤングカンヌだからこそ、1案に絞るというプロセスが非常に重要。そのタイミングで、これは 他チームと被らないか?その最初のフィルターを突破できるか?ありふれたソリューションになっていないか?の視点は確実に持っておくべきだなと。自戒の念も込めて。

    “ 恐怖訴求は最後の手に ”

    特に今回の課題において、恐怖訴求でなかなか人は動かしづらいのではという議論が審査会でなされました。かつては、こういった啓蒙広告において、恐怖訴求が増えた時代もありましたが、今の時代にはあまりそぐわないものではないかというのが審査員たち皆の意見でした。
    今回、圧倒的に群を抜いたGOLD候補がなく、TOP3を確定させるプロセスでかなりの議論がなされました。結果として、上の項目でも ふれた通り、恐怖訴求を入れ込んだアイデアが、その案をセレクトしたブレイブさや、他の案と全く被らなかったアプローチ、そしてクラフトの詰め、を持ってGOLDとなりましたが、本戦や来年以降のヤングカンヌでは、恐怖訴求は最後の一手にしておき可能な限り避けた方が良いと思います。

    “ PRINTを研究する、最低ルールを守る ”

    全ての部門の中でも最もトラディショナルな部門であるプリント。
    そこには一定のフォーマットや、ルールが存在します。
    これを、知っているのか、しっかり研究しているかでも勝敗が分かれていました。例えば最も基礎的なことでは、ロゴをいれること。
    企業のロゴがどこにも入っていないものは、その時点で減点対象になってしまいます。普段の広告づくりと同じです。一般のオーディエンスが、審査員に置き換わっているぐらいに考えて、その人たちが何も追加情報なく見た時にどう感じるか?どう心が動くか?を設計する視点が大切です。
    ビジュアルがあり、キャッチがあり、抑えのボディがあり、ロゴがある。
    世界で戦うにあたり、基礎中の基礎は押さえておくことはマストです。
    これは、過去の海外プリント広告などをどれぐらい研究しているかで、解決できるポイントです。プリントのアイデアの定着のさせ方には、 ある程度限られたフォーマットがあるので、どんな課題がきても戦えるように、本戦に向けて、来年のヤングカンヌに向けて、海外プリント広告を多く知っておくことは武器になります。

    “【告知】ここに書ききれなかったことは、2月の勉強会(計画中)で ”

    熱量あふれる今年のプリント部門の審査員たちのアイデアで、無理を言って、これまであまりやっていなかった「ヤングカンヌPRINT部門を振り返って、本戦や来年のヤングカンヌに少しでも活かしてもらいたい!勉強会」を、2月に開催予定です。(※ 事務局の方々と現在調整中です)
    審査員のみんながコメントに書ききれなかったことや、どんな審査がなされたのかなどをカジュアルに話す会になると思うので、ご都合がよろしければご参加ください。(※ エントリーいただいた方々にメールでご案内予定です)

    ― ― ―

    本戦、楽しんできてください。
    審査員一同、応援しています。
    いってらっしゃい。

    審査員 三井 明子ADKマーケティング・ソリューションズ

    ご参加いただいたみなさま、お疲れさまでした。
    浅井さん率いるプリント部門の審査会は、じっくり議論をかわしながら進みました。個人の事前審査を終えた後でしたが、全員であらためて全作品を見ることからスタート。浅井さんのていねいな進行が、個人的にとてもうれしかったです。

    ゴールドは、初見でドキッとした作品。ここまで過激な表現で大丈夫なの?と戸惑いながらも特に印象に残るアプローチでした。審査員のみなさまと議論を重ね、美しいデザインとコピーの構成など全体の完成度が高く、きっとカンヌでも力を発揮していただけるだろうということで、最終的に満場一致で決定しました。ただ、恐怖訴求に感じられる(本来は避けたい)という点などをきちんとフィードバックさせていただいた上で、カンヌに挑んでいただこう、というお話に。この経緯はエントリーいただいたすべてのみなさまに、誤解なく伝わると良いなと思っております。

    シルバーは、課題をポジティブで軽やかなメッセージにしているところが魅力的。

    ブロンズは、アイデアとアートディレクションの高さが秀逸でした。

    個人的には、ファイナリストはもちろん、残らなかった作品にも心に残るものがたくさんありました。アイデアは素敵なのに、完成度が低かったり詰め切れていない作品が多く見受けられて残念に感じました。来年トライいただけるみなさまは、どうかご留意して挑んでいただけたらと存じます。
    浅井さん市川さん谷島さんとの議論は学びばかりで、審査会の内容をそのままお伝えしたいと感じていたのですが、勉強会を開催していただけることになりました!
    みなさま、ぜひご参加くださいませ。
    たくさんのエントリー作品にふれることで、大きな刺激をいただきました。このような機会をありがとうございました!
    日本代表となったみなさまのご健闘を期待しています!

    審査員 谷島 康葉ジェイアール東日本企画

    アジアにおける女性作家の作品の所蔵率が少ない、という問題。
    作品を通して自分の意識を変えるよう気づきをたくさんいただくことができました。
    難しい課題に挑戦された参加者のみなさま、本当にお疲れ様でした。
    審査においては、下記の点を大切にして選考させていただきました。

     

    ●定着力

    わかりやすくスピーディに伝わるよう計画された画面構成か、背景色やフォントのサイズは最適か…など。 プリント一枚というシンプルな部門ゆえに、細部の詰めが作品をもう一段階強くすると、改めて感じました。 アイデアや切り口がいいのに惜しい!と思う作品が多くありました。 

    ●メッセージ性

    状況の説明や悲観で終わらず、見た人の気持ちが動くような発見や、行動につながるメッセージがこもっていると、受け手を巻き込み、課題を解決する力が強くなると感じました。

    ●独自性

    取り上げているモチーフやメッセージ、切り口が被っているチームが多くありました。
    難しいポイントではあるのですが、アイデアを選ぶ段階で、思いつきやすいモチーフでないか?という冷静な見直しも大切だと感じました。

    たくさんの作品、ひとつひとつに良いところがあり本当にむずかしい審査でした。
    発見した独自のメッセージを、丁寧に画面に落とし込んだチームが上位に残り、さらにその中でも、本選で闘うことができる力を感じるチームがゴールドを勝ち取ったのだと思います。
    おめでとうございます!本選でも、ぜひ頑張ってください!