2024.4.23 share

Q1審査を通して得た気づき

フィルムクラフト部門の審査において一番タフなのは、そのフィルムのコンセプトやアイデアではなく、クラフトを評価する点。審査員はプロダクションのプロデューサーやディレクターが多い中、エージェンシーのクリエーティブは少し頭を切り替えて審査する必要があります。
出品の際に気をつけることは、ケースフィルムもきちんとクラフトすること。特にそのフィルムのクラフトにおける異常値にフォーカスすること。海外アワードにおいて柳沢翔監督は超有名人。彼の仕事はもちろん実際のフィルムも素晴らしいですが、ビハインドザシーンの異常値が群を抜いて素晴らしく、それはケースフィルムを通して初めて伝わります。
相鉄のケースフィルムを見て、一人の審査員が「こんな撮影、日本人しかできない。うちの国じゃ絶対できない。」と驚愕しておられました。個人的には国籍によって左右されるものではない、とは思いますが、海外の人たちからそうやって日本人のクラフトが高く評価されることはとても誇らしいことであり、自信を持つべきことと思いました。

Q2審査の中で印象に残った施策作品名とその印象について。



①PLAY IT SAFE

個人的グランプリ。オンライン審査から、見れば見るほど新しい発見があり、どんどん好きになっていった。オペラハウスの50thのアニバーサリーに、よくぞこんな逆説的な歌詞で全体を仕上げ切ったと思う。そのクラフト力と勇気に脱帽。ミュージカル調の演出の中に、巧みな編集で50年の歴史が詰め込められた傑作。



②THE MOVING CANVAS

費用の問題なのか、サウンドデザイン部門にしか出品されていなかったのがもったいないと感じたフィルム。アートディレクションやアニメーション含め、あらゆるクラフトが”The MOVING CANVAS”というコンセプトを高めていて素晴らしい。普段目に見えないバッテリーだが、それこそがインドの熱狂とカオスを創っているのである、というクライアントの矜持を感じる仕事。



③MICRO MIRACLE

フィルムクラフト審査の難しさを象徴するエントリー。技術は異常値であることは間違いない。ただ個人的には、この技術自体の評価ではなく、この技術を使ったフィルムのクラフトを評価すべきではないかと思った。かつてIBMが世界最小の原子単位でアニメーションを作っていたが、技術の紹介に終わらず、素晴らしいフィルムに昇華させていたように。