2021.11.15 share

パートⅡ

黒人クリエイターらとディスカッション

映像作家 B・モネ氏
 広告会社やプロダクションは
  勇気を持って黒人の映画製作者を選べ

 B・モネ氏は「クイーン・コレクティブ」の最初の作品である『Ballet after Dark』を監督した。クイーン・コレクティブはP&Gなど3社が人種とジェンダーの平等を促進するために展開しているプログラムである。B・モネ氏はコマーシャルなど数多くのプロジェクトを手がけている。

B・モネ氏


—この業界でスクリーンを広げ、視野を広げるためには何が必要か 

 私は主にコマーシャルを手掛けているが、テレビや映画などの長編作品にも積極的に関わっていきたいと考えている。広告代理店やプロダクションは、自分とは異なる外見の人をもっと雇うべきだと思う。新人にチャンスを与えることを躊躇するプロダクションやエージェンシーは多く、私たちのような新人の存在感は希薄になりがちだ。ただ、「Free the Work」や「Bid Black」、P&Gのように、さまざまな人種を選ぶ企業も増えている。

—クイーン・コレクティブの最初のディレクターの1人でもある。 

 そのおかげで、私の作品は多くの人の目に触れることができた。たくさんのサポートやメンターを得られたと思う。この経験は一生忘れないだろう。有色人種や有色人種の女性らが映画制作者としていつも経験できるようなことではない。もっと多くのプログラムが勇気を持って、同じことをしてほしいと願う。 

クリエイター メガ・ゴーンフリー氏
 才能ある人に働けるチャンスを

 メガ・ゴーンフリー氏はクリエイター。P&Gとは、「Widen The Screen」、TikTokチャレンジ、Venusブランドのクリエイティブプログラムなど、いくつかのプロジェクトで協力している。

メガ・ゴーンフリー氏


—どんなクリエイティブをつくっているのか。

 主に音楽系のコンテンツをつくっている。カバーであれ、オリジナル曲であれ、そのときに気に入ったものは何でも、外に出してファンと共有している。

—今はより多くの機会を得ていると思うか 

 それは確かだ。制作したビデオは、他のブランドや企業が私に仕事を依頼する際のショーケースとなる。私のコミュニティには、才能のある人がたくさんいるが、それを披露することができないという問題がある。

メディア企業CEO ミシェル・ギー氏
 黒人文化は愛されても
  文化を生んだ黒人は愛されない

 米国のメディアのうち、黒人が経営するメディア企業への投資はわずか1%と推定されている。黒人の企業への投資をもっと増やして、エコシステムを豊かにし、黒人のコミュニティに経済的な支えとなるコンテンツを共同で提供する必要がある。メディア業界で最も著名な経営者の一人であり、現在はEBONYとJETのCEOを務めるミシェル・ギー氏に聞く。

ミシェル・ギー氏


—黒人が経営するメディアはどんな役割を果たしているか。 

 黒人が所有するメディアは、真実と揺るぎない関係があると最初に断っておきたい。私たちは真実を訴え続けなければならないのである。例を挙げよう。JET誌は世界に衝撃を与えた写真を最初に載せた雑誌だ。それはエメット・ティル氏。白人女性に口笛を吹いたことで殺されたアフリカ系アメリカ人の少年だ。1955年のことだった。

 これこそが「スクリーンを広げる」ために必要な真実である。世の中には依然としてそうした差別が存在すると人々に理解してもらうため、真実を語らなければならない。そういう会話なしに平等を得ることなど、決してできない。 

 私が言いたいのは、人々はブラックカルチャーを愛しているが、それを生み出した黒人を愛しているのかどうか。黒人はマネタイズされていて、お金も使うし、クールでヒップな存在である。しかし、黒人は成長のために必要な投資を受けようとは望まないのである。

—広告主が黒人経営者のメディアと協力していくためには何が必要か。 

 第一に「トランザクション」という言葉を排除しなければならない。ブラックメディアと取引関係を築こうとしても、うまくいかないことが多い。私たちはイメージをベースとしたビジネスはしない。それだけでは十分な仕事量を生み出すことができない。電話がかかってきて、イメージを基にした取引がしたいというのなら、相手は真剣でないことが分かる。決して投資はしないだろう。 

 P&Gが動くときは真剣であることが分かる。P&Gがパートナーとなって一緒につくっているプラットフォームは、新しいクリエイターを中心に構成されている。ブランドにはインフラ投資が求められる。我々がやっていることは、私のブランドだけでなく、次に来る人、可能性のある人、プラットフォームを提供できる人にも役立つ。相手を見極め、世代を超えて成功できるようにすることが求められる。 

 今では黒人を雇うことも、黒人のストーリーを語ることも、黒人のクリエイティブを向上させることもできる。賢いやり方で提携できれば、それが生命線となり、長期にわたって良好な関係を保ち、価値を持続できるだろう。 

—進展を加速させるために何をすべきなのか。 

 ビジネスは変わらなければならない。そのためには、文化の一部である人を雇い入れるところから始めるべきだ。文化のないところには、本物の会話は生まれない。スポーツや食べ物、音楽などではなく、実際に何かを経験した人たちの肌の色を見てほしい。そのためには、市場を変え、多様な人材を確保し、席を埋め、理解を得られるようにしなければならない。 

 ブランドにはそれを要求する力がある。もしP&Gのように我々とビジネスをしたいという企業があれば、我々がリーチしようとしている消費者を理解している人をテーブルに加える必要がある。




(以下、マーク・プリチャード氏の語りに戻る)

 クリエイティビティの至るところに平等を組み込むため、多くの企業がステップを踏みだすことを願う。社内から始めよう。ユーザーの声を力にしよう。システムを変えよう。そしてスクリーンを広げよう。

 新しいシステムをつくるためには、今存在するシステムを壊さなければならない。その過程では意見がぶつかることもあるだろう。それは避けて通れない道である。しかし、観察よりも行動を、完璧よりも進展を優先すべきだ。平等とインクルージョンは創造力を高め、成長機会へのアクセスを広げると同時に、公平性と所得拡大をもたらす。すべての人の成長と価値を促進する。 

 P&Gはこの動画が視聴者にとって有用であることを願う。さまざまな会社がどんなことに取り組めばいいのか、見つけてほしい。一緒にスクリーンを広げられれば、社会の視野はもっと広がる。世界により多くの価値と善意をもたらす機会が得られるはずである。

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