2025.4.30 share

Q1審査を通して得た気づき

今回の審査を通して、改めて「ストーリーテリングの原点」について考えさせられました。ビジュアルでいかに物語を伝えるか、サウンドデザインでいかに心情や状況を印象づけるか。そういった観点からギミックものやグラフィカルなものよりも、心を揺さぶるものの方が評価される傾向にあったと思います。今年は例年以上にインドからの応募が多く、それらのクオリティーの高さに度肝を抜かれるとともに、インド市場の拡大、クリエイティブの躍進に大きな希望を感じました。
日本からの出品映像はそういった目線でみると、心を揺さぶるものや、部屋にいる全員が「WOW!」と思うものが少なかった印象でした。結局は国籍に関わらずどんな人が観ても感情を揺さぶるものになっているか、ということに尽きると実感しました。

Q2審査の中で印象に残った施策作品名とその印象について。

①The Steel of India (Jindal Steel)

たかが鋼鉄なのに大元の企画がクラフトによって大きく飛躍し、とても見応えのある映像に仕上がっていました。全てのショットが美しく崇高な映像に仕立てられている上に、サウンドデザインにおいてもインドの精神性のようなものを感じさせる力強さがありました。監督の心と頭の中を覗きたいと思うくらい度肝を抜かれる作品であることに、異論を唱える人はいませんでした。

②The Incomplete Anthem (EBM)

裕福な子供達はカメラを意識して自分たちがどう映っているか、どう映るべきかわかっていながら歌うのに対し、恵まれない境遇の子供達はカメラを意識する余裕などなく、たじろぎ慄くだけ。その違いに貧富の差の根源が見え、恐ろしいくらい凄まじい力強さを感じる作品でした。シンプルなアイデアがここまでパワフルになれることに、オーソドックスなフィルムメイキングの底力を感じました。

③Shot on iPhone – Midnight

エントリーされていた部門が多かった分、何度も議論が重ねられた作品として印象に残っています。iPhoneならではしか撮れないアングルやカメラワークを駆使している点においては全員高評価であった反面、シネマトグラフィーそのものに対する評価は厳しかったです。使用するカメラに左右されない、シネマトグラフィーそのものを評価するというインテグリティーを感じました。