2021.12.6 share

新しいマーケティング

第5のパラダイム:パーパスと創造性の交差点」
マスターカード

 マスターカードによるセミナーには、ラジャ・ラジャマンナル氏が出演。同社のCMOおよびCCO(チーフ・コミュニケーション・オフィサー)を務めるラジャマンナル氏は『量子マーケティング:明日の顧客のための新しいマーケティング・マインドセットをマスターする』の著者としても知られている。

 同氏は、自らが提唱する「量子マーケティング」をマーケティングの再発明と定義し、業界を第5のパラダイムへ導くための新しいフレームワークと説明。それはテクノロジーと文化の構造的変化、大量のデータがもたらす危機の中で、ブランドを成長させるアプローチだとする。

 ラジャマンナル氏によれば、世界のCEOたちの7割が、自社のCMOやマーケティング部門を信頼していないという。いまやそれは排除されつつあるセクターだ。代わって、CGO(チーフ・グロース・オフィサー)やCRO(チーフ・レベニュー・オフィサー)らが重宝されるようになっている。

 「4P(Product/Price/Place/Promotion)のすべての要素で、我々は時代の変化についていけていない。マーケティングという行いを正しい場所に戻すときだ」(ラジャマンナル氏)。

 同氏は続いてマーケティングの歴史を4段階に分けて解説。①4Pの適正化が行われていればモノが売れた時代から、②よりエモーショナルなコミュニケーション(心理学的アプローチ)の時代、③デジタルマーケティングの時代、④SNSとモバイルの時代をへて、我々は次のパラダイムの入り口にいると言う。その理由はデータ社会が抱えるリスクだ。人工知能(AI)に代表される先端技術は、人々から彼ら自身の人生に対するロイヤルティまで奪い去る懸念がある。

 この“新しい現実”に対しては、データによる「定量的」発想をも包括した「量子的」アプローチが必要で、その際に重要なのが「パーパスと創造性」なのだという。終盤では、黒人の女性起業家を応援するキャンペーン=写真=など、マスターカードの取り組みも紹介した。


デジタル・コマース

デジタル・コマースの台頭に備えてブランドを再考する
WARC

 「マーケティング予算が激減する中、マーケターはより乏しい資源で、より多くのミッションに挑まざるを得ない。長期におけるビジネスの健全性に鑑みて、我々は重大なリスクと向き合っている。パンデミック後を考えても、ブランド構築とチャネル戦略を前提から再考することが必須だ」

 そう語るのは、マーケティング・インテリジェンス企業WARCのコンテンツ部門を率いるデヴィッド・ティルトマン氏=写真。同社にはクライアントより、①デジタル・コマース時代に依然ブランディングは重要なのか②いかにしてブランド構築と販売パフォーマンスのバランスを取るのか③オンラインでの販売を強化するのにどんな広告が必要なのか――といった疑問が寄せられているという。

 このセミナーではティルトマン氏が、企業のマーケティング担当者の声やエコノミストの意見、多数のリサーチ結果も紹介しながら、こうした問いに答える形で進行。①に関しては、「名声」「心理面での効果」「認知」「価値の認識」、以上4つの観点からブランディングの今日的有効性を訴えた。事実WARCが「FAANG(Facebook・Amazon・Apple・Netflix・Google)」と呼ぶ企業群のブランド広告への投資は増大しているという。

 ②③については、「ブランド構築」を「将来の需要」として捉えることの重要性を強調。ブランディングへの投資は、未来の需要創出につながり、持続可能な成長が達成される。だが、現在の多くのオンライン広告は、目下の需要を刈り取るために実施されており、イギリスではすでに広告効果の下落傾向も現れ始めたという(IPAによるレポート)。

 ティルトマン氏は、デジタル・コマース時代のブランディングと販促の最適バランスに関して、「オンラインのフォーマットはブランド構築の機会ともなる」「プラットフォームは“フルファネル”なアプローチを推進している」「マーケターが探しているのは、その2つを両立させるソリューション」という3つのヒントを提示した。


ブランド体験

体験こそ重要だ:私たちが次に再創造すること
アクセンチュア

 「初のUber乗車、Airbnb滞在を覚えているだろうか」。そう問いかけるのは、アクセンチュア・インタラクティブのCEO、ブライアン・ホイップル氏だ。このセミナーでは、ホイップル氏がビジネスを再創造した二人のトップリーダーのエピソードを紹介しながら、ブランド体験の未知の領域を探る。

 「シームレスな体験は目新しいものではない。しかし、パンデミックによってそれは加速している」と語るホイップル氏によると、際立った体験を顧客に提供できるブランドの収益性は、そうでない同業他社に比べて6倍にもなるという。「にもかかわらず、未開拓の体験領域はいまだ広大に残されているのだ」

 新しいブランド体験のヒントになるのはエシカル消費だ。多くの若者たちが衣服の素材や製造プロセス、環境への配慮について知りたがっている。衣類のサブスクリプションといったシェアリングエコノミーも、サステナブルな“ショッピング体験”と言えるだろう。高価なブランド洋服を安価に貸し出すサービスで急成長を遂げた「レント・ザ・ランウェイ」のCEO、ジェニファー・ハイマン氏の活動は、この時代のニーズに応えるものである。

 南米など物価変動の激しい国においては、商品の売買の際に生じる交渉事にも、新しいブランド体験への可能性が秘められている。ブラジルでは若者層が、頻繁に変わる物価や金融取引の手数料の高さ、手続きの煩わしさから高額の買い物を避ける傾向がある。

 サンタンデール銀行ブラジルのCEO、セルジオ・リアル氏によると、同行では手数料がかからないデジタル金融プラットフォームを展開するなど、新しいバンキング体験の創出に力を入れ、ミレニアム世代やZ世代を取りこむことに成功しているという=写真。

 「ブランドは体験によって構築されている。そこには創造性やテクノロジー、顧客の潜在的なニーズが含まれ、成功している企業は例外なく、体験を再創造していることに気づいてほしい」。ホイップル氏はそのコメントでセッションを締めくくった。

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