2020年2度目のLIONS Liveが10月にも開催。10月版の誰にでも分かるレポート②

LIONS Live10月版は、世界優秀事例の舞台裏がメイン。事例ビデオを見つくしている人間にも、大変に面白い。

 2020年2回目となるLIONS Liveは、10月に開催されました。最初は“世界中のどこからでも、いつでも好きな時に、無料で見られる!”とメッセージしていましたが、その後、THE WORKという有料サイトでしか視聴できないことになりました。とはいえ、そこでどんなセッションが繰り広げられたのかについて、2回目となる今回とそして次回、なるべく分かりやすくお伝えししていきたいと思います。カンヌライオンズ日本公式サイトの中に、10月版5日間のプログラムの日本語訳も掲載されていますので、合わせてご覧ください。

1日ごとにテーマが設けられ、2日目と4日目はクリエイティビティ・イン・アクション

 LIONS Live10月版の全体テーマは、「世界の優秀事例の舞台裏を見に行こう!」というもので、実際に見てみると、筆者のような“事例ビデオを見つくしている人間”にも、大変に興味深いものでした。またこの全体テーマの他に、毎日日替わりのテーマも掲げられていました。その中でもDay2とDay4の2日間を使って繰り広げられたのが、“クリエイティビティ・イン・アクション”です。この「イン・アクション」とはどういったことを指しているのでしょうか?

 Day2のウェブサイトの最初に記載されていたのが、「Without execution, an idea is nothing.(実行されなければ、アイディアなんて無いも同じだ)」というもの。このexecutionという言葉は“実行”とか“仕上がり”と訳されますが、カンヌライオンズやクリエイティブの世界では、例えばテレビCMで言えば撮影や編集といった“アイディアを具現化する技術”を指します。その意味では、craft(技能/技術/わざ)という言葉も同じような意味に使われます。FILM部門とFILM CRAFT部門の違いです。さらに、統合型キャンペーンが主流になってからはexecutionやcraftは撮影や編集にとどまらず、ideaを具現化するための様々な技術や技を指すようになっています。ウェブサイトの解説は、こう続きます。「we celebrate the brilliant thinking and craft that goes into delivering the world’s best creative campaigns.(世界でベストなクリエイティブ・キャンペーンを実施に至らせるような素晴らしい思考と技術を賞賛します)」。

 というわけで、この2日間は、アイディアそのものはもちろん、それを“どう実行したか?” “実行に伴う苦労は?”といったことが語られました。

贈賞式で拍手喝采を浴びたIKEA のThisAblesとは?

 ここでは、2019年のカンヌライオンズ贈賞式で、拍手喝采を浴びた広告コミュニケーションに関するセッションを紹介しましょう。ヘルス&ウエルネス部門グランプリ他を受賞した、IKEAのThisAblesです。広告会社所属のコピーライターでプロジェクトの一員でもあり、自身が脳性麻痺を患う障害者でもあるEldar本人が登壇し、聴衆全員がスタンディングオベーションをするような大きな賞賛を得たことを、その場にいた筆者はよく覚えています。

 施策の概要をまずご説明します。広告主は、IKEAイスラエル。そこから世界に広がり、該当商品の売上は33%アップを記録したといいます。IKEAのミッションは、「より良い毎日を、多くの人に」というものです。購買しやすい価格で使いやすく良いデザインの商品を提供しようとしているのです。しかし、障害者の方にとって、IKEAの家具を含む多くの家具は、けして使いやすいものではありません。例えば、ソファから立ち上がるのにも一苦労、ベッドサイド・ランプのボタンを押すのも大変で、ドアを開けるのも簡単ではないのです。障害者用の家具も買うことはできますが、その価格は通常の2倍以上もし、デザインの選択肢も非常に少ないのが現状です。

 そこで、広告会社のマッキャン テルアビブが考えたのが、13の既存商品に加えることで障害者が使いやすくなるような「アダプター(Ad-on)」の開発です。例えば、ソファの脚にはめることで座高を高くし、障害者の方も立ち上がりやすくするアダプター。あるいは、ベッドサイド・ランプのボタン部分に装着することで各段に押しやすくするアダプター。あるいは、引き手が小さく開けにくいドアにアダプターを付ければ、肘を使って開けることができるようになります。ThisAblesというのは、Disable(手足が効かない)をモジって、This(これ)でAble(できるようになる)という意味ですね。

IKEA ThisAblesの舞台裏には、何があったのか?

 この施策について、筆者は複数回セミナーや記事等で紹介し、そのためにすでに何度も何度も事例ビデオを見ていました。それでもこのLIONS Live10月版のBehind the Scene:“ThisAbles”という20分ほどのセッションは、発見に満ちていたのです。カンヌライオンズ応募用の事例ビデオも2分で簡潔にまとめられていて、施策の概略を把握するのにはとても便利なのですが、やはり把握しきれないところは残ります。20分ほどのセッションを見ると、”そうだったんだ!“ ”そんな風に進めたのか“ ”そんな苦労があったのね“といった感想がどんどん湧いて来ました。

 そのうちの幾つかを紹介しましょう。オリエンはIKEAの家具を少し変え障害を持った人にも使えるようにすることで、家具は変えずにアダプターを開発しようと提案したのはマッキャン側であること。マッキャンは障害者支援のNGOと協力し障害者の人達とIKEAの店舗内で7日間のワークショップをすることからその提案を着想したこと、マッキャンのプランナー達はつねにIKEAのコアバリューに立ち戻りIKEAウェイで企画し実行しようと努めていたこと。6回を数えるプレゼンにもかかわらず素晴らしいアイディアだが実行が難しいと広告主に言われたこと、企画者達はあきらめずに試作したアダプターを店頭に置いた売り場を作りそこで再度プレゼンしOKを得たこと。3Dプリンターが実際に稼働している様子、ビジネスと人々の両方に貢献するよう心掛けたこと、“Never say never(出来ないとは決して言わない)”を合言葉にしていたこと、などです。素晴らしい広告コミュニケーションは簡単には生まれず、真摯さと工夫の数々とへこたれない精神で実現されるのだと、筆者はある種の感動を持って視聴しました。

 さて、他にもNY TIMESのThe Truth is Worth itや、インスタ映え用のバーチャルお洒落に特化したadDRESS THE FUTUREなど、筆者も注目して来たカンヌライオンズ受賞作の舞台裏が目白押しです。次回では、可能な限りの“舞台裏”を紹介しながら、Day2とDay4以外の日にも言及したいと思います。

※LIONS Live10月版の報告は、次回となる3回目まで行う予定です。お楽しみに!

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