2020.10.21 share

4回にわたって「誰にでも分かるLIONS Liveレポート」をお届けしてきましたが、今回は「LYNX Liveレポート」をお届けします。LYNX Liveは、今年10月5日~7日、ドバイ・リンクスがオンライン開催されたもの。ドバイ・リンクスは、ドバイ(アラブ首長国連邦)で毎年開かれているカンヌライオンズの姉妹イベントです。各セミナーは、会期が終了した今でも、しばらくの間はオンデマンドで録画を見られるようなので、興味がある方は、ぜひ覗いてみてください。

【MENA地域ならではの独特な雰囲気】

皆さんは、“MENA(ミーナ)”という言い方をご存じでしょうか?LYNX Liveにも頻繁に登場するこのMENAは、Middle East and North Africa、つまり中東と北アフリカ地域を指す言葉です。国で言うと、アラブ首長国連邦(UAE)、アルジェリア、イエメン、イスラエル、イラク、イラン、エジプト、オマーン、カタール、クウェート、サウジアラビア、シリア、チュニジア、バーレーン、モロッコ、ヨルダン、リビア、レバノンなどを指しています。
この地域はビジネス的にもMENAとしてまとまって扱われることが多いらしく、たとえば、〇〇社アジアパシフィックといった感覚で、VMLY&R MENAやFP7 MaCann MENATといった企業名が、LYNX Liveには並んでいます(MENAにトルコも加えてMENATと呼ぶこともあるようです)。
LYNX Liveは、基本的にはLIONS Liveと同じような形を取っていますが、幾つか異なる点があります。まず、時間帯はLIONS LiveがBST(英国夏時間)で表記されていたのに対して、こちらはGST(Gulf Standard Time=湾岸標準時)。現地での午後いっぱいの開催が、日本の18時~22時頃に当たり、リアルタイムで視聴しようとした場合、時に深夜に及んでいたLIONS Liveより視聴しやすい環境でした。
またTikTokとSNAP chatがメインのスポンサーとして付いていて、GoogleとFaceBookが目立っていたLIONS Liveとは、ちょっと雰囲気が違いました。TikTokが提供する“LYNX Live Flashbacks”というコンテンツでは、各年の代表的な受賞テレビCMを見ることができるのですが、まったく見たことのないアラビア語と思しき言語のテレビCMなどがあり、興味深く視聴しました。
また、LYNX Liveのテーマ名も、KeynotesやLynx Shouts(ショートフィルム)などLIONS Liveにならっているものもあるのですが、 “マーケターズ from MENA”や“MENA,ホワッツ・ネクスト?”など地域に限定したテーマも見られました。

【具体的にはどんなセミナーがあったのか?ここでは、2つの内容を紹介したい。】

では、具体的なセミナーについて、2つ取り上げて紹介したいと思います。
ひとつは、「マーケター from MENA」の中から、「ASAD UR REHMAN, UNELIVER」です。このASAD氏もそうですが、LYNX Liveでは登壇者も当該地域出身者が多く、MENAに造詣の深くない自分としてはなかなか読めないスペルも多かったです。(そして、時に英語のナレーションで作られたショート・フィルムに、アラビア語らしき字幕が付いていたり、とその独特さが伺えました)。インタビューはキャンペーン誌“ミドルイースト”のエディターであるAUSTYN ALLISONが勤めました。このALLISON氏は、他のセミナーでもちょくちょくインタビュアーとして顔を出していました。ASAD 氏の肩書は、DIRECTOR MEDIA & DIGITAL TRANSFORMATION, UNILEVER」となっていました。
ALLISON氏が質問したのは、マーケターに必要な3つの資質を挙げるとしたら?というもの。ASAD氏の答えは、PASSIONATE(情熱的であること)、TRANSFORMATIVE(変革的であること)、INCLUSIVE(包括的であること)でした。トランスフォーマティブは、全世界的に現在のマーケティングやマーケターに(あるいは多くのビジネスマンに)、求められていることでしょう。インクルーシブは、近年“多様性と包括性(ダイバーシティ&インクルージョン)”といった形で頻繁に語られるキーワードで、“差別的にならない”といったニュアンスでも使用される言葉です。このキーワードはMENAにおいてどういったニュアンスを持っているのか?ということに、興味がわきました。
ふたつめは、SNAP chatが提供する「マスター・クラス」から、“The Endless Immensity of the Sea(この海の終わりなき広大さよ)”と題された、クライアント~代理店関係に関するセミナーです。主なスピーカーは、MaCann MENAのRegional Head of Strategy and Truth CentralであるTahaab Rais氏。クライアント~代理店関係は、英語圏ではClient Agency Relationshipとして、セミナー等でよく取り上げられる分野です。
このセミナーは、小テーマごとにミニドラマのようなものが挟まっていて、それがけっこう面白い。最初の方に出て来る、代理店の提案に関してのクライアントのメンバーや部長さんによる発言や、それに対してまた代理店の人達が答える寸劇が、なかなかにリアリティがあって、「日本以外のプレゼンテーションとその反応は、こんな感じなのかぁ」と、とても勉強になりました。
Tahaab氏は、このテーマに関して8つのポイントを挙げて解説して行くのですが、特に面白かったのは、ポイント2として掲げられていた「VALLUING THE VALUE(価値をきちんと評価しよう)」。要は、“代理店の提案や企画に対してクライアントはきちんと対価を支払うべきだ”という主張なのですが、そのミニドラマがなかなか笑えました。ヘアカットしてもらいながら“今日はテストってことにしておいて”と言い張る女性や、普通のレストランで“残念ながら予算を取ってないんだ”と言い訳する男や、“次回重要な仕事を頼むから今日は無料にしておいて”と食料品店で若者に伝えるオジサンなどなど。クライアントの担当者によっては時にこういう態度の人もいるので、“あるある”と思わずニヤリとしてしまいました。こんなコンテンツを見ると、MINAの人々は意外と“皮肉屋さん”なのかもしれないですね。コロナ禍も収まったら、いつか、ドバイ・リンクスにも参加してみたいものです。

※さて、LIONS Liveの秋バージョンが10月19日(月)~10月23日(金)に開催されることになりました。こちらについても何回かに分けて、レポートしていこうと思います。お楽しみに!