【カンヌライオンズ2020は、オンライン開催。誰にでも分かるLIONS Liveレポート➁】「人の顔、表情、話し方、言葉の使い方」 に直接触れる。 カンヌライオンズの魅力の一端をLIONS Liveで体験した。

 前回のレポートに引き続き、「誰にでも分かるLIONS Liveレポート②」をお届けします。私が毎年のようにカンヌまで出かけて行く理由の一つは、広告界の様々なプレイヤーの顔や表情が生で見られるからです。彼ら彼女らが語る話し方や言葉の使い方に、一生懸命に耳を傾けます。もしそうでないのであれば、書かれた記事を読めば済むわけです。
 しかし、記事を読むのと“直接触れる”のでは、大きな差があります。「この人たちは、どのように感じ、何を訴えようとしているのか?」を感じ取ることにこそ、大きな意味があるのです。たとえ英語が全部は分からなくも、何度も耳に聞こえてくるキーワードは、重要な事柄だと分かります。オンラインで開催されたLIONS Liveでも、こうした魅力は体験することができました。今回はこの視点から、内容の幾つかをご紹介していきましょう。

 

【広告界は、世の中の流れに、とても敏感!BLMへの言及も多数。】

 広告界には、“人々の専門家”という側面があります。製品やサービスについてはクライアント側の方が詳しいに決まっていて、ではどうして広告会社 / エージェンシーが存在できるか、その大きな理由の一つは“人々”(消費者 / 生活者)に詳しいからです。そして“人々”に詳しいためには、世の中の流れに敏感である必要があるのですね。
 現在の世界では、LGBTQ、ダイバーシティ&インクルージョン、ジェンダー・イコーリティ、SDGsといったことが、何年にもわたって人々が関心を寄せていることであり、つまり広告界でも数多く語られてきたことでした。これに加えて今回のLIONS Liveで語られたことは、1つはコロナ禍にまつわることで、もう1つはBLM(Black Lives Matter)運動に代表される人種差別撤廃に関することでした。
 多くのセミナーでそれらは、基調として流れているのが感じられました。正面から取り上げたセミナーも多数あって、例えば「We Are Pi Presents Before You Shoot」というキーノートでは、広告制作でのキャスティング上の問題、広告に黒人を登場させないなどの差別について語られました。ちなみにWe Are Piは、AdAge誌が選ぶSmall Agency of the Year(2019)を受賞した広告会社。Piはパイと読みπにちなんでいます。Before You Shootは、“撮影をする前に”という意味でキャスティングを意味しながらも、“銃を撃つ前に”という含意もあると思われます。

【クリエイティブの声を聴く!アウトドア部門審査委員長】

 日本語では一般に“クリエイター”と言いますが、英語ではCreatorとは呼びません。名詞的に使われるCreativeで“クリエイティブ”と呼びます。それに従ってここでも、制作部門の人たちのことは、“クリエイティブ”と呼びたいと思います。
 カンヌライオンズでは近年多くの職種の人が登壇しますが、それでもクリエイティブの人たちの語ることは、耳を傾けるべきものの1つです。LIONS Liveで言うと、“プレジデンツ・ブリーフィング”という各部門の審査委員長が登場するシリーズで、クリエイティブの声が聴けました。このシリーズでは1日1部門の審査委員長を招き、カンヌライオンズ事務局のマネージング・ディレクターであるサイモン・クック氏が、インタビューするというものです。
 ここではアウトドア部門の審査委員長Luiz Sanches氏(ALMAP BBDO BrazilのChairman, CCO&Partner)の語りを幾つか紹介しましょう。「テクノロジーより“ヒューマン”なものを!」「クラフト(仕上げ)も重要」「会話を作り出そう、人々の会話をIgnite(火をつける)しよう」などと呼びかけました。参考にすべき過去の事例では、ナイキのコリン・キャパニック(人種差別に反対してチームを馘になったアメリカンフットボール選手)を起用したもの、ウオール街の公園に少女像を設置したフィアレス・ガール等を挙げています。また、ビール会社がニュージーランドで行った“ブルートローリアム”(私も大好きな2016年の事例です)を「ソーシャル・グッドをユーモラスに昇華した例」として紹介していました。また、「Outdoorは基本的にローカルなものだが、ローカルから始まってグローバルな影響を与えることができる」とも語り、広告ではなく、「コロナ禍の中、イタリアで広がった皆がベランダに出て歌う例」を挙げたのも印象的でした。
 Luiz Sanches氏というグローバルに活躍するクリエイティブの生の声は、世界のクリエイティブの考えていること・感覚・ニュアンスが感じられて、とても参考になりました。

【CMO達の声を聴く!CMO ディベート】

 近年のカンヌライオンズの大きな魅力の1つは、広告主側のCMO(マーケティング責任者)の生の声が聴けることです。クリエイティブ達の声とはまた一味違う形で、広告界 / マーケティング界の“今”に触れることができます。今回のLIONS Liveでも多くのCMOが登場していましたが、私が面白かったのは、P&GのCMOであるMarc Pritchard氏が司会進行役を務め、他にマスターカード、レゴ・グループ、LVMHのCMOが議論した「The CMO Growth Council Debate」です。
 彼ら彼女らが“何”を語っているかも重要なのですが、彼らの“たたずまい”や“雰囲気”も、自分にとってはひじょうに重要な、一種の情報になりました。ここでは、CMOのカリスマと言ってもいいMarc Pritchard氏の発言を幾つかご紹介しておきましょう。「Force for good(世の中に良いことをする力)とForce for growth(経済的成長をもたらす力)の両立を目指そう」「そのために、クライアント-広告会社-メディアの全体的関係(Eco-system)を改善していく」「我々が必要としているのは、単なる広告ではなく行動だ(We need act not just ads)」などなど。そして、the Global CMO Growth Counsil(世界CMO成長評議会)の活動についても紹介されました。
※さて、LIONS Liveの具体的な内容について、テーマを変えて、あと2回報告して行こうと思っています。お楽しみに!

twitter

ARCHIVE PAGE