
Q1 審査を通して得た気づき
今年のSpikes Asiaを通して感じたのは、アフターコロナ的な施策がほぼ姿を消し、AI活用も一巡したことで、アイデアの本質に回帰した作品が多く受賞していた点です。Brand Experience & Activationは依然として花形カテゴリーであり、ブランドがなぜその体験を提供するのか、実装の難易度や技術の新規性、イシューと結果の整合性などについて非常に活発な議論が行われました。
Creative Commerceは売りの仕組みそのものを問う難しい領域ですが、売るための創意工夫は広告の原点であり、その知恵に触れること自体が刺激的でした。AI、デバイス、決済など技術の進化はさまざまな領域に及び、それらをキャッチアップしながらアイデアへと転換する力が、ますます求められていると感じました。
Q2 審査の中で印象に残った施策作品名とその印象について。
①BACK TO KAI TAK / CATHAY (Gold)
まず印象に残ったのは、キャセイパシフィック航空による旧カイタック空港の着陸航路を再現した施策です。一見するとアクロバティックな飛行を再現しただけに見えますが、言論の自由や民主的な制度が失われつつある香港において、人々のアイデンティティを取り戻す意味を持つ取り組みであることが議論され、評価が大きく変わりました。文化的背景を深く理解しようとする審査員の姿勢も非常に印象的でした。
DARESCORE / MOUNTAIN DEW (Grand Prix)
Mountain DewのDareScoreは、登山や救助の難易度をデータで可視化することでエベレストへの集中を分散させ、シェルパの稼働率を上げるなどネパール経済にプラスの変化をもたらしました。他の施策と決戦投票をなん度も行い議論を重ねましたが「人類共通の資産になり得る」という評価が決め手となり、グランプリを獲得しました。
③THE KILOMETER LOYALTY EXCHANGE / HONDA (Silver)
アジアには文化や習慣と強く結びついた独自のイシューがあり、それに向き合う大胆なアイデアが、強い意志で実行され、成果に結びつく。このような施策はやはり評価されやすいです。Hondaの施策では、数千万人が長距離をバイクで移動するインドネシアの帰省文化における事故リスクに対し、走行距離を公共交通のチケットに交換する仕組みによって「乗らない選択」を促しました。ブランドの役割そのものの再定義が高く評価されました。