2026.4.2 share

Q1 審査を通して得た気づき

近年の広告賞ではリモートでの審査が主流になりつつありますが、どうしても意見を順に述べるだけの“発表の場”になりやすいと感じています。今回、Spikes Asia 2026の対面審査に参加し、改めてライブ感のある意見交換の重要性を実感しました。

多様なバックグラウンドを持つ審査員が集まる中で、事前の交流や何気ない会話を通じてお互いのキャラクターを理解することが、発言の受け取り方に大きく影響します。例えば、ある発言のタイミング一つをとっても、それが単にその人の性格によるものなのか、あるいは他者の意見を踏まえた上での判断なのかによって、その意味合いは大きく変わってきます。

また個人的には、日本人はグローバルな場では少し慎重になりやすく、受け身に見える場面もあるかもしれません。今後は、相手の文脈や空気を読み取る力に加え、自ら積極的に関与していく姿勢を持つことで、より豊かな議論に貢献できるのではないかと思います。

グローバルな環境においては、言葉そのものだけでなく、こうした間合いやタイミング、文脈を含めてコミュニケーションを捉え、活かしていくことが、今後ますます重要になると感じました。

Q2 審査の中で印象に残った施策作品名とその印象について。

まず、今年のSpikes Asia 2026では圧倒的にインド勢の作品が目立っていました。これはどのカテゴリーや作品を見ても圧倒的な結果でした。インドのLeo Burnett India は APAC Creative Agency of the Year 合計13作品で受賞し、そのうちグランプリは3作品ありまし た。

①WhatsApp “Baatan Hi Baatan Mein”(インド)

タイトルは『Love in few words』。これからインターネットやテクノロジーの普及が進むインドの地方都市を舞台にした、心温まるラブストーリーです。現在、新規インターネットユーザーの約50%がこうした地域から生まれているとも言われており、テキスト入力よりも『声』でのコミュニケーションが好まれる傾向にあります。そうした背景の中で描かれる本作は、日本をはじめとする多くの国では少し忘れかけているかもしれない、“初めて恋人とメッセージを交わすときのドキドキ感”を思い出させてくれる、非常にチャーミングな作品だと感じました。


②Spark “It’s better with Spark” (ニュージーランド)

今回Film Craft 部門でグランプリを受賞された作品です。このような広告祭では、どのような作品が受賞しやすいか、パターンが見えてくる傾向があります。。胸を打つ力強いメッセージ、美しく作り込まれた感情的なストーリー、大胆で革新的なアイデアなど。。
しかし時には、最も印象に残る作品は、最も派手なものではありません。むしろシンプルなものです。旅をするなかで小さな演出一つ一つが小さなストーリーがつまっている。まるで一杯のお茶のように、静かに心を温め、さりげなく、心地よく、その瞬間が過ぎた後も余韻が残るようなものです。そんな気持ちにさせて貰える、ひょっとしたら今のご時世で一番我々の心に必要なまったりとした時間を与えてくれる作品でした。


③Natural Icecream “Tree to Treat”(インド)

映像美とユニークな音楽の融合によって、観る者を惹きつけてやまない作品です。特に、伝統的なインド音楽のヴォーカルと、現代音楽で用いられるエレクトロのヴォーカルチョップ(歌声を加工した機械的なサウンド)が絶妙なバランスで組み合わされており、その表現力には目を見張るものがあります。さらに、日本のお家芸とも言えるピコピコとしたエレクトロサウンドとの相性も抜群で、この大胆かつ洗練された組み合わせには思わず唸らされました。