2025.4.30 share

Q1審査を通して得た気づき

このカテゴリーでは「広告」としての側面だけではなく、あくまで「エンターテインメント・ミュージック・ゲーム」であることの意味を追求するディスカッションをしていました。アウトプットが生活者に押し付けになっていないか、ただの長い広告になっていないか。ブランドとの接続はもちろん考えた上で、ただブランド課題を解決するのではなく、人々を楽しませたり、興奮・熱狂させるようなものこそが、このカテゴリーの力だなと思います。日本において「社会の課題感」の規模や深さはアジア諸外国に比べると、良くも悪くも生活でクリティカルなものではないなと、感じています。だからこそ「課題発想」や「マーケティング発想」ではない「コンテンツ発想」施策が得意なクリエイターがもっと増えると、より言語を超えて楽しんで世界に通用するクリエイティブが誕生するのではと、今回同部門で唯一の日本人として参加する中で感じました。

Q2審査の中で印象に残った施策作品名とその印象について。

①AIDAKHAR

カザフスタンで行われた男性用デオドラントブランド「Old Spice」の施策。男性の「男らしさ」が重要視される社会で馴染のないデオドラントを、男らしさの象徴である著名人と共に楽曲を制作し訴求。そのキャッチーさでYouTubeのMVだけでも2.6億回視聴を突破し世界中に拡散。(※カザフスタンの人口は2000万人前後。)現地の大規模フェスでもオーディエンスから大合唱が起こるほどのムーブメントに。企業発のコンテンツが、現地の大衆から愛され世界に羽ばたいた特異な事例。

②NIGHT FISHING

韓国で実施されたHyundai Motorの施策。車載カメラの映像だけで制作された短編映画を、あえてフィジカルな実際の映画館とコラボレーションし展開。広告や無料ストーリーミングではなくあくまで作品として昇華した「有料での映画」として配給し話題に。ある種、企業主導の広告コンテンツに対し、生活者がわざわざ映画館に足を運びお金を払ってでも視聴しにいく行動を作った点が秀逸。

③THE KITKAT BREAK CHAIR

オーストラリアのNestle KitKatの施策。長年定着しているタグラインである「Have a Break, Have a KitKat」のまさに現代版・ゲーム文脈の鮮やかな施策。ゲーム分野で著しく成長している「配信者/Streamer」文化の中で、配信者の休憩中に放置される「椅子の背もたれ」に注目。QRコードを仕込むことで配信者の休憩中の時間を、視聴者にとっても参加型のゲーム化にした点が秀逸なアイデア。