Film部門 紹介コラム

 

カンヌライオンズのアワード審査は、審査委員長のブリーフィングによってはじめられる。通常公開されないが、今回は特別に、LIONS Live期間中にカンヌライオンズのマネージング・ディレクターのサイモン・クックによる各審査委員長に対してのインタビュー形式で、その裏側を知ることができた。
LIONS Live Day5では、Film部門のブリーフィングが行われた。来年のカンヌで、2020年、2021年の2年分が審査される予定だ。リチャード・ブリム審査員長の言葉を聞いて感じたことを来年Film部門の審査員を務める原野守弘さん(もり)にインタビューした。

― President Briefingを見てのご感想をお願いします。

コロナ禍の影響について特別視や悲観をする必要はない、むしろ制約の中でよりよいアイデアが生まれている可能性がある、という点に非常に共感します。
また彼はちょっとWetになるけどと断っていますが「クリエイティビティにどれだけ救われたか、ということをしっかりと讃えたい」と言っています。これは、グランプリを選ぶ基準になりそうですね。

― 審査委員長のリチャード・ブリム氏は審査基準として、「①作品を、わざわざ時間を取ってみたいと思うか、②どれだけ心をとらえるか、③どれだけ人の話題にのぼるか」を挙げていますが、 2020/年のカンヌ現地審査で原野さんご自身が心に留めておきたい審査の視点を教えてください。

彼の審査基準は、非常にスマートです。アイデアがどうとか、エグゼキューションがどうとか解釈に困る御託を並べるのではなく、一人のオーディエンスとしてどう観たか/感じたかをシンプルにつきつめていこうということだと思います。フィルム広告のまさに原点ですね。
来年は、2年分の審査になりますから、単なる “今年のトレンド発表” ではなく、かなり多様性のある受賞ラインアップになるでしょう。その中で、個人的には、ノンバーバルなものの中から強いものを見つけ出す役割が担えればと思っています。これまで評価された自分の作品もそのようなものが多いですし、英語がネイティブなみということもないわけですから。

― コロナ禍、フィルムの新たな撮影ができないなど様々な影響がでています。
業界の中で所謂「ニューノーマル」は生まれてきていると感じるシーンはありますか?

撮影現場でもいろいろ対策が取られてきていると思いますし、コロナをネタにしたり逆手に取ったりした企画も出てきていると思いますが、「ニューノーマル」というよりはまだ「対策」や「反応」といった域を出ていないものが多いのではないでしょうか。「ノーマル」が長い歴史の積み上げの上に成立しているように、「ニューノーマル」の形成もそんな簡単なことではないように思います。

― 原野さんにとって、「カンヌライオンズ」とはどのような場所ですか?

日本人でも外国人でも、友達に久しぶりに会う場所、という意味が大きいです。そして、新しい出会いの場でもあります。OK Goのダミアンとは、とあるカンヌのパーティーでたまたま隣に座ったということがきっかけで、ミュージックビデオの制作にまで発展し、それは私の人生を大きく変えました。

― これからカンヌを目指すクライアントやクリエーターへ、一言コメントをお願いいたします。

確かに受賞というのもひとつの目的ではあると思うのですが、いろいろな作品や人に触れて「世界はなんて広いんだ」と感じることがまず大事だと思います。クリエイティブの仕事はときに孤独な仕事ですが、自分と同じく、表現やアイデアづくりを愛している人間がこんなにいるんだ!と知ることは、その後の人生に勇気を与えてくれると思います。

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