江藤尚志(えとう ひさし)CluB_A ディレクター
1970年神奈川県生まれ。ニューヨーク大学映画学科卒業、帰国後にCMディレクターとしてのキャリアをスタート。主な代表作に、ナイキジャパン ナイキベースボール「宣言」、AIGジャパン・ホールディングス「#Tackle The Risk」などがある。ACCグランプリ、ADFESTゴールド等、国内外での受賞多数。

Q1.2020/21カンヌライオンズで最も印象に残った作品3つを挙げてください。

THE LONG GOODBYE – ANEIL KARIA(RIZ AHMED / WEPRESENT)

I AM EASY TO FIND(THE NATIONAL)

MACMILLAN – WHATEVER IT TAKES(MACMILLAN)

Q2.国内外でクリエーティブの評価方法はどんな点が最も違うと感じましたか。

 審査員次第で作品の評価はかなり変わるのではないかという印象を受けた。ある作品について議論していたとき、審査員の1人が「確かに美しい映像だが、数年後にも記憶に残る作品だろうか」と疑問を呈した。フィルム・クラフトは部門の性格上、映像技術が重視される。しかし、いかに技術に優れたエンターテインメント動画だとしても、主張がなければ人の心には届かない。熱い議論の末、心に残る、素晴らしい作品を選べたと思う。

 今、映像は過渡期にある。審査した作品には、いわゆる広告のように短いものから、ミュージックビデオのように長いものまであった。共通しているのは動画という点だけ。心に訴えかける映像であれば、見た人に感動をもたらし、社会を動かす力を秘めている。既成概念を覆すような映像作品が求められる時代に入ってきている。

Q3.クリエーティブの新たなトレンドやヒントが見えてきましたか。

 英国や米国の作品には、ソーシャルなテーマを取り上げたものが多かった。社会が成熟している英米では、ブランドに対する社会課題解決へのプレッシャーが強い。ブランドは批判を恐れて発信しないでいることは許されず、スタンスを明確にする必要に迫られている。日本とは違う社会的背景を感じた。

 欧米の作品には、映像の力を信じていることが随所にうかがわれた。制作費のかけ方など、作品に対する本気度が違う。欧米のクリエーティブを真似する必要はないが、映像にかける熱量は見習いたいと思った。

 今回、審査員を務めたことで、さまざまな映像をじっくり見る機会が得られ、大いに刺激を受けた。表面的ではない、心からの叫びがある映像は、強く心に残ると感じた。印象に残った作品に挙げた「I AM EASY TO FIND」は、その後も何度も見返している。