原野 守弘(はらの もりひろ) もり クリエイティブディレクター 
電通、ドリル、PARTYを経て、2012年11月もりを設立、代表に就任。主な代表作に、「NTT Docomo:森の木琴」「日本は、義理チョコをやめよう。Godiva」など。カンヌ国際広告祭金賞、One Show金賞、ACCグランプリ、グッドデザイン賞金賞、Penクリエイターアワード2017など、内外で受賞多数。近著に『ビジネスパーソンのためのクリエイティブ入門』がある。

Q1.2020/21カンヌライオンズで最も印象に残った作品3つを挙げてください。

A WORD(WIEDEN+KENNEDY) 

Let Her Run ( SporTV )

Eternal Pregnancy ( Equal Pay Day )

Q2.国内外でクリエーティブの評価方法はどんな点が最も違うと感じましたか。

 審査そのものは、基本的に一緒だと思います。

 審査員の構成や議論のルールなどに違いがあります。日本の広告賞は、審査員がずっと変わらないことが多く、何十年も同じ人が審査員を続けていることが少なくありません。女性比率も相変わらず低いままです。

 今回の審査はリモートで行われましたが、全て録画され、審査員はプロとして発言内容に責任を持つ必要がありました。忖度(そんたく)のようなことはなく、極めてフェアに審査が行われていたと思います。思ったことを思ったまま発言し、他人の意見を聞いて意見が変わったり、完全に満場一致の評価になったりすることもありました。

 日本の広告賞では、誰が作ったのか分かっていることが多く、年長者や著名クリエイターの作品に対して、忖度した発言がなされているなと感じることがあります。

 パブリックなものは、パブリックな価値観や態度で運営されるべきです。

 そこが、日本の広告賞との大きな違いだと思いました。

Q3.クリエーティブの新たなトレンドやヒントが見えてきましたか。

 特にありません。トレンドのようなもので、安易に広告賞の結果を理解しない方がいいと思います。それぞれの作品を虚心坦懐(きょしんたんかい)に見ることが大切です。

 例えば、「A Word ( Wieden + Kennedy )」は、トレンドではありませんが、注目に値する作品です。これは、コロナ禍の米国で顕在化した、アジア系アメリカ人に対する人種差別に抗議する作品ですが、広告代理店の自主制作的な作品という点が重要です。クライアントのために所謂(いわゆる)ソーシャルグッド的な広告を作るのではなく、社会問題に対して、広告代理店が自発的に、自らのクリエイティブ技術を使って、メッセージを発信する行為は、業界として多いに賞賛すべき態度ではないか、と思いました。

 個人的には、音楽が好きなので、音楽に注目してシルバー以上の作品を見直すことをお勧めします。映像について日本の制作能力が劣っているのは一目瞭然ですが、音楽についても課題が多いなと感じました。

原野氏がチョイスしたカンヌ受賞作をテーマ別にご紹介します。

Grand Prix

CROCODILE INSIDE(LACOSTE)

YOU CAN’T STOP US (NIKE)

#WOMBSTORIES(ESSITY)

新しい動き

A WORD(WIEDEN+KENNEDY)※ケースフィルム

ソーシャルグッドは今

Eternal Pregnancy(Equal Pay Day)

Nobody is Normal(Childline)

LET HER RUN(SporTV)

HAPPY BIRTHDAY, TWITTER(Canadian Centre for Child Protection)

クライアントワーク3種

The Ultimate Safety Test (Volvo)

A Million More (Volvo Car Corporation)

The Tower (Volvo Trucks)

音楽が大事

THE MOLDY WHOPPER (Burger King)

THE HIRING CHAIN(CoorDown)

LIFE NEEDS TRUTH(The New York Times)

イノベーション系

Drawn Closer (Cox Communications)

THE EPIDEMIC (MONICA LEWINSKY)

アジアの受賞作品

FAMILY (RC COLA)

TELL THEM (DENTISTE)

PLEASE ARREST ME (RIT Foundation)