岩嵜博論(いわさき ひろのり)博報堂 フェロー/武蔵野美術大学 クリエイティブイノベーション学科 教授
リベラルアーツと建築・都市デザインを学び、2001年博報堂入社。マーケティング、ブランディング、イノベーション、事業開発などに従事。2021年武蔵野美術大学教授に着任。ストラテジックデザイン、ビジネスデザインを専門として研究・教育活動に従事。Red Dot Award: Communication Designなどを受賞。近著に『パーパス 「意義化」する経済とその先』。

Q1.2020/21カンヌライオンズで最も印象に残った作品3つを挙げてください。

TIENDA CERCA(AB InBev)

RAISING PROFILES(The Big Issue & LinkedIn)

ROADSIDE MARKET(Mastercard)

Q2.国内外でクリエーティブの評価方法はどんな点が最も違うと感じましたか。

 今回「Creative eCommerce」部門の審査を担当した。eCommerce部門では、もはやクリエイティブ単体というよりも、それぞれのビジネスが社会にどのようなインパクトをもたらしたかが評価対象となっている印象だった。その上で、これらのビジネスを加速するためにどのようなクリエイティビティが発揮されたかが問われていた。ビジネスとクリエイティビティは表裏一体のものになりつつあることが認識できた。パンデミックがもたらしたように、複雑で不確実な問題を抱える現代社会では、これまでのビジネスの作り方では立ち行かなくなってきている。こうした状況の中、クリエイティビティが持つ生活者に対する共感を前提に、あるべき世界の姿を創造する力に注目が集まっている。ビジネスを加速するためのクリエイティブという評価軸は今後も強固なものになると思う。

Q3.クリエーティブの新たなトレンドやヒントが見えてきましたか。

 Creative eCommerce部門の審査において顕著に見えてきたのは、新しい公共・パブリックのあり方だ。Creative eCommerce部門の受賞作品の中には、「TIENDA CERCA」や「ROADSIDE MARKET」のように、企業が地域の中小事業者のためのコマースのプラットフォームをつくるという事例が見られた。こうした公共性の高い仕組みは行政が整備しても不思議ではない。しかし、パンデミックの状況下においては行政の力も限定的で、企業による公共的な取り組みが世界中で生まれた。もはや公共は行政だけが担うのではなく、企業をはじめとした多様なステイクホルダーが担うようになっている。Creative eCommerceの事例が示すように、その公共の形はこれまでに見たことがないクリエイティビティに満ちたものだ。新しい公共をデザインするためにいろんな人が知恵とアイデアを出し合う未来がすぐそこまで来ている。