志村和広(しむら かずひろ) 電通 グループ・クリエーティブ・ディレクター
大学・大学院ではバイオテクノロジーを専攻。現在は、クリエーティブの領域拡張を目指し、広告のみならず、サービス&プロダクト開発、イノベーション領域に取り組む。主な仕事に、トヨタ自動車「OPEN ROAD PROJECT」、マグロの目利き職人の後継者AITUNA SCOPE」、日本経済新聞社「NIKKEI BLEND」などがある。Cannes LionsOne ShowClio Awards、ACC賞等、国内外での受賞多数。

Q1.2020/21カンヌライオンズで最も印象に残った作品3つを挙げてください。

SAYLISTS(WARNER MUSIC GROUP)

LAUGH TRACKER(TENNESSEE DEPARTMENT OF TOURIST DEVELOPMENT)

ADDRESSPOLLUTION.ORG(CENTRAL OFFICE FOR PUBLIC INTEREST)

Q2.国内外でクリエーティブの評価方法はどんな点が最も違うと感じましたか。

 私が審査したCreative Data部門は、データという手段自体がカテゴリーになっているため、そのアウトプットは様々なものが集まる。今回、世界中のエントリーを審査して実感したのは、世界の最先端の仕事では広告代理店の取り組む領域が拡張しているということ。日本では広告代理店の仕事はまだまだコミュニケーション領域が主流。これに対して世界からのエントリーでは、その領域はビジネスやサービス、さらに行政とコラボレーションした社会全体の課題解決に拡張し始めていた。結果、審査においても、データを活用した高度なマーケティングや美しい表現よりも、最新のデータやテクノロジーを活用したアイデアで、人や社会をより良い方向に導く、課題解決型のプロジェクトが評価された。

Q3.クリエーティブの新たなトレンドやヒントが見えてきましたか。

 近い将来、データやAIがクリエイティブにとってもアイデア実現のために標準装備すべきツールとなるのではないか。ここ数年のテクノロジーの急速な進歩は、大量のデータ収集コストを低減し、一部の専門家に限られていたAI活用のハードルを大きく下げた。新規性の高いアイデアの実現可能性が飛躍的に広がったことになる。例えば「Laugh Tracker」。アイデア自体はこれまでも聞いたことがあるものだ。しかし、音声情報や位置情報を取得するセンサーの価格低下や、AIを活用した笑い声の精度の高い分析手法が実現を後押しした。そして「子どもたちが本当に喜んだ場所を可視化し、新しい指標をつくる」というアイデアが実現された。これからクリエイティブに問われてくるのは、企画力だけではなく、テクノロジーを当たり前のように使いこなし、鮮やかに課題解決をする実現力なのかもしれない。